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人口激減時代を迎える日本で、上がらない労働効率

ニューズウィーク日本版 / 2019年4月24日 15時40分

<総人口、生産年齢人口ともに今後急減する日本社会では、働き方の質を変えて労働効率を高めなければ国際競争を生き残れない>

2018年10月時点の日本の推計人口が公表された。総人口は1億2644万人で、8年連続で減少が続いている。15~64歳の生産年齢人口の割合は59.7%と6割を切った。この数値は戦後最低で、人手不足が深刻な問題になりつつある。

主要国で見ると、今後日本は突出した急激さで人口減少が進む。2010年を100とした将来推計人口の推移を描くと、<図1>のようになる。左側は総人口、右側は生産年齢人口の予測カーブだ。



アメリカ、イギリス、フランスは、2050年まで人口増加が続く見通しだ。ドイツは2020年、韓国は2030年から人口減少の局面に入る。日本はすでに人口減少が始まっており、その傾斜も大きい。今後30年間で総人口が2割近く減ることになる。生産年齢人口は減少のスピードがさらに速く、2010~50年にかけて4割近くも減ると見込まれる。少子化が進んでいるためだ。



2050年には生産人口が総人口の半分以下になるが、それはどのような状態なのか。仕事の多くはAIやロボットに委ねられているかもしれない。しかし現状はそうしたユートピアからはほど遠く、社会を回すには人間が働かないとならないはずだが、人々の「労働量」は国によって違いがある。

労働量とは、働いている人の数と労働時間の掛け算で算出される。これを人口で割れば、どれくらいの労働量で社会を回しているかという指標になる。11の国について3つの要素を揃え、人口あたりの労働量を試算してみた<表1>。



日本は就業者が約6500万人で、週の平均就業時間は39時間だ。就業時間が短い印象を受けるかもしれないが、これは女性や高齢者も含めた全就業者の数値だからだ。両者の積の労働量(a×b)によって1億2800万人ほどの人口(c)を養っている。人口あたりの労働量は19.7となる。

ヨーロッパ諸国では、日本よりも少ない労働量で社会を回している。ICT(情報通信技術)化が進んだ北欧諸国で、人口あたりの労働量が少ないのは頷ける。最も低いフランスは、一週間無休で営業したパン屋が罰せられるような国だ。それでも社会は回る。対して日本、韓国、ベトナムといったアジア諸国は効率の悪さが目につく。

どれほどの労働量で社会を回しているかは、GDPのような経済指標とは違った「豊かさ」の指標と読める。人口減少の時代では、こちらの効率性を高めていく必要がある。外国人材の受け入れ拡充(労働力増加)が決まったが、働き方の質を変える余地は多分にある(ICT化の遅れ、無駄な会議、長時間の「痛勤」地獄、過剰サービスなど)。働き方改革推進法が施行され、24時間営業の短縮、無人店舗の導入、玄関置きの宅配便なども始まってきた。

20世紀型の人海戦術で国際競争をしのぐのではなく、働き方の質を変えないといけない。その意識改革が最も求められるのは学校だ。未来を担う子どもたちには、未来型の働き方のモデルを示す必要がある。

<資料:総務省統計局『世界の統計 2019』、
    UN「World Population Prospects 2017」、
    ILO「ILOSTAT」>



<各国別総人口、生産年齢人口の予測カーブ>



<各国別人口あたりの労働量>




舞田敏彦(教育社会学者)

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