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インドネシアの宗教と民主主義の危うい関係

ニューズウィーク日本版 / 2019年4月25日 15時30分



67年から98年にかけてのスハルト軍事独裁政権は、宗教は社会の調和を乱し、反政府活動の温床になりかねないと警戒していた。しかしスハルト以後は多くの信仰が息を吹き返し、宗教意識は急速に高まった。

「(17年の)アホック追放デモと、18年にマアルフが副大統領候補に指名されたことの間には直接的関係がある」と言うのは、ヒューマン・ライツ・ウォッチのジャカルタ支部に所属するアンドレアス・ハルソノ。「ジョコはイスラム教徒だけでなく、イスラム主義者の信認も必要としている」。彼によれば、信仰とそれを政治に持ち込むことは区別される。

ヘビメタ好きの元実業家であるジョコと76歳の宗教家の組み合わせは実に奇妙だ。ジョコは13~14日にジャカルタのスタジアムでロックコンサートのような選挙集会を開催したが、締めくくりにはマアルフが登場し、観客に祈りへの参加を求めた。

マアルフがインドネシア政府の最高レベルにいることが、2期目のジョコ政権に与える影響は未知数だ。だが陣営がイスラムの政治勢力を取り込んだことは、イスラム教徒が過半数を占める他国の傾向と歩調を合わせている。

エジプトやトルコのようなイスラム教徒が主流の国とインドネシアは構造的な類似性がある。それは、20世紀半ばまたは後半の世俗的権威主義が、長期にわたって抑圧されたイスラム教の活性化をもたらしたことだ。これら全ての場所で、イスラム主義が発言力を増している。

民主主義体制だからこそ

しかしこれは選挙を経た民主主義の結果だ。「この国で起きていることのいくつかはよくないことだし悩ましいが、多くの点でそれは民主主義の産物だ」と、ブルッキングズ研究所のシャディ・ハミドは言う。「民主主義は国民の感情を反映することを意味する。インドネシア国民は一般に、イスラム教が国民生活の中で大きな役割を果たすことを良くも悪くも支持している。民主化とイスラム化は密接に関連していることが多い」

彼はインドネシアにおけるアイデンティティー政治の台頭を、より大きな地政学的トレンドと捉え、「民主主義的競争が政策志向でも実務志向でもなくなり、アイデンティティーや文化、宗教の問題にどんどんのめり込んでいる」と考える。



スタジアムでの選挙集会にアホック追放デモの参加者がたくさんいたことからすると、ジョコの賭けは成功したといえるだろう。「マアルフ・アミンはジョコ陣営に活気をもたらした」と言ったのは、17年にはアホック追放デモに参加し、今回の選挙ではジョコに投票したという労働者のボイ・パクだ。

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