ムラー報告書公表から1週間、米政治の混迷はむしろ深まっている - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月25日 15時10分
だからこそ、大統領は全文公開後に怒ったわけですし、民主党の左派は「弾劾できないのはおかしい」と言い始めたのです。つまり、報告書の内容が玉虫色の灰色決着であっただけでなく、世論の受け止め方も玉虫色というか灰色ということになります。一週間を経過した中で、浮かび上がってきたのはそのような構図です。
こうした状況について、民主党左派のバーニー・サンダース議員(大統領候補)は、「弾劾を進めれば時間がかかる。そうなれば大統領選の議論も、ムラー報告書がどうとか、トランプの倫理がどうという話題に集約されてしまう。そうなれば、環境や医療保険や、あるいは性差別や移民差別など、必要な論争が全部、吹っ飛んでしまう」として、若手の「即時弾劾論」を戒めています。
この発言については、珍しくサンダース氏が原則論からマキャベリズムにシフトしたなどと話題になっているのは事実です。ですが、こうなると政策の左派と中道、即時弾劾論と戦略的な先送り論という2つの軸において、民主党はバラバラ。そう言われても仕方がありません。では、そのような「敵失」に乗じて大統領の勢いが浮上しているのかというと、必ずしもそうでもないところに、現在の米政治の不透明感があります。
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