英王妃の生首は本当に喋ろうとしたのか
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月25日 17時34分
心停止の後、30分も脳の活動がみられたことを示す研究もある。この際、検出されたのは脳波のうちデルタ波で、睡眠中やリラックスした状態でもしばしば観察されるものだ。
つい最近、心臓停止の後も脳が活動していることを示す新たな研究が発表された。心停止後、数分経つと脳の広い範囲で「広汎性脱分極」と呼ばれる現象が起き、活動は終わりを告げるという。この時の脳の活動は、脳波計で測れるほど強い。人間以外の生物に関しては、死後48~96時間経っても遺伝子発現などの活動は続いていて、量的に増える場合もあるとの研究もある。
人間については、死後も検出される脳の活動がどんなもので、それが脳の機能や意識的・無意識的な活動とどんな関係にあるのかについて、さらなる研究と分析が必要だ。
ちなみに、首を切られても生存できた事例の中で最も有名なのは、切断後18カ月も生存していた「マイク」の話だろう。いったいどうやって? と疑問に思うのも無理はない。マイクの場合、首を切られた際に脳幹がうまい角度で切断され、体の基本的な機能を制御する中枢神経系の一部が生き残ったらしい。また、タイミングよくうまい場所に血の塊ができたことで、死に至るような大量出血も免れたのだ。
言い忘れたが、マイクはニワトリだった。残念ながら、これが人間で再現される可能性はまずない。人間の場合、最も原始的な機能を制御する部位も頭蓋骨の中だからだ。アン・ブリンが斬首後も話そうとしたことを信じたいのは人情かも知れないが、この話はやはり眉唾ものだ。
(翻訳:村井裕美)
Adam Taylor, Director of the Clinical Anatomy Learning Centre and Senior Lecturer, Lancaster University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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アン・ブリンがヘンリー8世の王妃になり斬首されるまで
アダム・テイラー(英ランカスター大学上級講師、同大学臨床解剖学ラーニングセンター所長)
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