米中貿易交渉目前、中国も呆れたトランプの手のひら返し
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月7日 18時10分
<交渉に楽観的な観測を強めていた諸外国や投資家に冷や水>
ドナルド・トランプ米大統領は、余計なことをせずにはいられない――それが、5月5日に中国政府と世界中の人々が学んだ教訓だ。
世界の二大経済大国である米中間の貿易交渉の最終ラウンドを目前に、トランプは「中国との貿易交渉は続いているが、中国側が再交渉を試みていて進展が遅すぎる。駄目だ!」とツイート。その上で、中国からの2000億ドル分の輸入品に対する関税を10日に10%から25%に引き上げると表明。さらに現在は関税対象となっていない3250億ドル分の中国製品についても25%の関税を課す考えを示した。
世界の金融市場の反応は予想どおりだった。中国の二大株式市場はそれぞれ5%と7%下落した。米株式市場も500ポイント近く下げて始まったが(その後、部分的には回復)。
このツイートに、中国側の交渉チームは仰天した。何しろ彼らはこのあとワシントンを訪問して大詰めの交渉を行い、10日にも大筋合意を発表したい考えでいたのだ。
「脅しには応じない」中国のプライド
交渉チームを率いる劉鶴副首相の長年の同僚は、劉がトランプのツイートに「大いに当惑して」いたと語った。米中貿易協議では、合意をどのように実行するかや、合意に後戻りがあった場合に再び関税が課されるかなど未解決の問題があり、今週の協議が平和裏に終わる保証はなかった。だがトランプの瀬戸際政策は、中国政府をきわめて厄介な立場に追い込んだ。
2年前に関税の報復合戦が始まって以降、中国政府は米政府に対して、「脅しを受けた」状態での交渉には応じない考えをはっきり示してきた。つまりアメリカが(今回トランプがしたように)追加関税を課すと脅すなら、協議には応じないということだ。
中国の習近平国家主席は2018年12月に、G20首脳会議のために訪れたアルゼンチンのブエノスアイレスでトランプと首脳会談を行った際にもこのことを再確認し、トランプは関税の10%から25%への引き上げを延期することに合意した。ホワイトハウスのある外交政策顧問は5月6日、トランプは「脅しには応じない」という中国側の態度を「十分認識」していた、と認めた。
だが、こうした交渉姿勢が中国にとってなぜそこまで重要かをトランプが理解していたかどうかは定かではない。
過去30年の経済的な台頭で、中国には国家としてのプライドが生まれた。何十年にもわたって貧困に苦しんだ大国が、ようやく世界で相応の立場を手にしつつあるのだ。だがそうしたプライドは扱いづらくもある。中国共産党の保守的で超国粋主義な面々は、習の言動に注視している。彼が貿易のような重要問題で他国に屈する兆候が少しでもあれば、激しい習批判が巻き起こるだろう。
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