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この50年で完全に逆転した、日本の若年層と高齢層の投票者数

ニューズウィーク日本版 / 2019年5月8日 16時15分

<増える高齢者と減る若者、さらに若年層の投票率低下によって、日本の政治は完全に逆ピラミッド型、若年層軽視へと反転>

4月に統一地方選挙が実施された。気になる投票率だが、59市長選は47.5%、583市議選は45.6%で、いずれも過去最低を記録した。

間接民主制の社会では、国民は選挙で選んだ代表者を通じて政治に参加するが、選挙への関心は時代と共に低下している。長期的な推移が分かる衆院選で見ると、1967年の第31回の投票率は73.4%だったが、2017年(第48回)では53.7%まで下がっている。若年層では減少幅が大きく、20代は66.7%から33.9%へと半減だ。

少子化で若年人口が減っているうえに投票率がこれでは、投票所へ足を運ぶ若者の絶対数は激減しているだろう。それは肌感覚でもわかる。4月に筆者が地元の市議選の投票所に出向いた時も、老人ホームかと思うくらい来ているのは白髪の老人ばかりで驚愕した。

ベース人口に投票率をかけて年齢層別の投票者数を出すと<表1>のようになる。上段は1967年、下段は2017年の数値だ。



この50年間の変化はすさまじい。人口構成の変化と投票率の年齢差の拡大により、現在では投票所に足を運ぶ人の年齢構成は完全に「逆ピラミッド」になっている。筆者が投票所で目にした光景は、統計で鮮やかに可視化される。



これでは、若者の要望が政治に反映されにくい。想像がつくだろうが、政府に何を求めるかは年代によって異なる。昨年の『国民生活に関する世論調査』では、政府への要望を複数回答で尋ねている。<図1>は、横軸に20代、縦軸に70歳以上の要望率をとった座標上に32の事項を配置したグラフだ。



斜線は均等線で、この線より下にあるのは高齢者より若者の要望率が高い事項だ。雇用・労働問題への対応、景気対策の要望率は、若者が高齢者より20ポイント以上高い。少子化対策や教育振興の要望率も世代差が大きい。自分たちが直面している問題だからだろう。投票に行く若者が増えれば、図の右下の事項にも本腰が入るようになる。

若者の投票率を上げるには、彼らが馴染みやすいネット選挙の導入を真剣に考えるべきだ。また、選挙の年には一定額の供託金を市民税と一緒に引き落とし、投票に行ったらその場で返してもらえる「選挙供託金」を導入してはどうだろうか。中南米の諸国では、正当な理由なく投票しなかった場合は罰金を科されるが、確実に没収できる供託金のほうが効果はありそうだ。投票へのインセンティブを高めるには、こうした強硬策も必要かもしれない。

為政者に若者が少ないのも問題だ。同性愛への寛容度を見るとわかるが、日本の若者は欧米に劣らず先進的な意識を持っている。議場に若者が増えれば社会は変わる可能性がある。地方では、議員のなり手も不足している状況だ。地方に移住し、若さを武器に積極的に立候補してみるのもいい。間接民主制の政治参画の具体的な方法(投票、出馬)をレクチャーして実践を促すのは、学校における公民教育の役割でもある。

<資料:総務省『国政選挙における年代別投票率』、
    内閣府『国民生活に関する世論調査』(2018年6月)>



<年代別人口、投票数の変遷>



<世代別の政府への要望事項>




舞田敏彦(教育社会学者)

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