ベネズエラ危機、独裁打倒の失敗とアメリカの無責任
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月9日 16時20分
中南米の現代史上最悪の人道危機を招いたマドゥロは、依然として権力の座にあるが、民衆の抗議と一部兵士の離反で足元が揺らいでいる。
4月末の騒乱の最中に、政府の基盤は強固だと語ったのはブラディミール・パドリノ・ロペス国防相と、筋金入りのチャベス主義者のディオスダド・カべジョ元国会議長だった。パドリノはツイッターで反対派を卑怯者と呼んだ。ところが大統領のマドゥロ自身は沈黙を決め込み、ただツイッターに軍隊は「鋼の神経」で政府を守れと投稿したのみ。政権内の力のバランスが変わったのかもしれない。
ボルトンは記者会見で、トランプ政権がパドリノや親マドゥロのマイケル・モレノ最高裁長官と接触していると明かした。まるでアメリカと結託しているかのように名指しされて、この2人の立場は危うくなるに違いない。これからアメリカ側と接触しようと考えていた人々も、名前を暴露されることを恐れて身を潜めるだろう。
こうして政権基盤が揺らいできても、あいにく政権交代には至っていない。とはいえマドゥロ政権の不確実性ともろさが露呈したのも事実。幹部の更迭や粛清もあり得る。同じことは、蜂起に失敗した反政府側にも言える。しかし悲しいかな、アメリカの姿勢だけは変わりそうもない。失敗は明白なのに。
From Foreign Policy Magazine
<本誌2019年5月14日号掲載>
※5月14日号(5月8日発売)は「日本の皇室 世界の王室」特集。民主主義国の君主として伝統を守りつつ、時代の変化にも柔軟に対応する皇室と王室の新たな役割とは何か――。世界各国の王室を図解で解説し、カネ事情や在位期間のランキングも掲載。日本の皇室からイギリス、ブータン、オランダ、デンマーク王室の最新事情まで、21世紀の君主論を特集しました。
クリストファー・サバティーニ(コロンビア大学国際公共政策大学院講師)
この記事に関連するニュース
-
「公正な大統領選」危ぶむ声=現職劣勢で野党弾圧強まる―ベネズエラ
時事通信 / 2024年7月5日 14時23分
-
米、ベネズエラと対話再開 28日大統領選で公正な選挙求める
ロイター / 2024年7月4日 10時40分
-
米との対話受け入れ=「3日に再開」―ベネズエラ大統領
時事通信 / 2024年7月3日 7時40分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その5(最終回)日本との同盟を超重視
Japan In-depth / 2024年6月28日 19時0分
-
「侵攻の引き金」を引いたウクライナの"失策" 対立の根底には2つの「ロシア人像」がある
東洋経済オンライン / 2024年6月25日 20時0分
ランキング
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください