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強気の米中、双方に死角あり「アメリカはまずい手を打っている」

ニューズウィーク日本版 / 2019年5月14日 16時50分

しかも、中国が本気でけんかをする気になれば、人民元の切り下げに踏み切りかねない。中国もダメージを受けるが、「やられた以上はやり返したい」と思えば、それを実行する可能性はある。そうなれば、アメリカ経済に厳しい逆風が吹き付ける。



――トランプが関税についてツイッターで連続投稿している。その内容を見る限り、関税の機能を理解しているか疑わしい。

戦術上の計算という面もあるだろう。ある行動を取るぞと相手を脅すときは、「こっちはへっちゃらだ」とアピールしたいと考えるのが普通だ。

とはいえ、トランプはそうした駆け引きのレベルにとどまらず、関税が大好きだと言わんばかりのことを書いている。トランプは何十年も昔から保護貿易主義を信奉していて、関税を好ましいものと考えてきた。

問題は、関税をちらつかせると、マーケットがいつも嫌がることだ。そのため、株価が自らの成功の指標だと考えているトランプは、板挟みの状況になるときがある。

政権内にもさまざまな考えがある。関税で脅しをかけつつも、最終的に目指すべきは自由貿易の拡大だと考える人たちがいる一方で、(通商問題担当の大統領補佐官であるピーター・)ナバロのように、アメリカに雇用と投資を呼び戻す上で関税が有効だと考えている人たちもいる。

――関税によりアメリカの消費者と企業の負担を増やせば、本当に雇用と投資がアメリカに戻ってくるのか。

私はそうは思わないが、政権内には本気でそう思っている人たちがいる。トランプ自身の頭の中でも、政権の中でも、関税についての考え方は一様でない。

トランプ支持者に言わせれば、全ての人を煙に巻いて手の内を見せないことにより、大きな成果を獲得する作戦なのだという。言ってみれば、狂人のふりをすることで駆け引きを有利に運んでいる、ということらしい。

では、実際にどのような成果を上げたのか。それまでのやり方やそのほかのやり方より、好ましい成果を得られたのか。

私には、アメリカがまずい手を打っているように見える。相手国に関税を課すという方法は、エスカレートさせればさせるほど弊害が大きくなる。中国が報復してくれば、弊害はさらに大きくなる。

しかもアメリカは、日本やメキシコやヨーロッパなど、ほかのあらゆる国にも貿易問題でけんかを売ってしまった。これらの国は、特に知的財産権問題などでは、対中関係でアメリカに同調してくれたはずの国々だ。

もし対中関係が最大の問題だと考えるなら、ほかの国々と足並みをそろえて中国と対峙しなくてはならない。そうすれば、中国は報復しにくくなる。世界のあらゆる国に報復するわけにはいかないだろう。

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