「地球は平面」と主張する人々が、丸い地球に出会ったら
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月15日 21時0分
DELTA-V PRODUCTIONS
だが1回目、カメラに光は写らない。「ライトを持ち上げて。思いっきり頭より高く」と、カンパネルラは声をかけ始めた。助手がライトを高く持ち上げていくと、光はようやくカメラに写った。地球は平面ではなく、丸い証拠だ。「面白い」と、カンパネルラは言う。「これは面白い」ここでドキュメンタリーは終わる。
地球平面説運動がみずから仕掛けた罠にはまる場面を期待する人にとっては、満足のいく結末といえる。だがこの作品は、経験的な証拠が陰謀論者の信念を変える役に立たない理由がいくつもあることを示している。
「このことに対する信念が揺らいだら、人間関係はどうなるだろうか。そうすることにどんな利益があるのか? 一般の人たちはまた自分を歓迎してくれる? いや、気にもかけないだろう。でも、コミュニティで得た友人は? みんな失うことになるのか? そのとおり。突然、両方の社会で孤立する」と、心理学者のペール・エスペン・ストクネス博士は、ドキュメンタリーの中で語る。「それはアイデンティティの問題になる。この世界において自分は何者か。この問題に関する闘いを通して、自分を見つけることができる」
「もし自説を捨てようとしたら」と、ストクネス博士のコメントを受けてサージェントは言う。「仲間がきてそんなことはやめろと止めるだろう。だから捨てられない、もし捨てたかったとしても」
「そして突然、政府職員の大半が気候変動を信じないような事態になる」と、元NASA宇宙飛行士のスコット・ケリーは、反科学的な信念の現実的な危険について語っている。
サージェントは、地球平面説国際会議の講演で、支持者からの手紙を紹介した。「マーク、私の孫は12歳、10歳、8歳で、すべて第3世代の平面説支持者です」と彼は読み上げた。「学校で科学の先生が子供たちに地球が時速1600キロで太陽の周囲を回っている、と言うと、クラスの約3分の1が一斉に叫んだのです。『それは違う』と」。
「平面説よ、永遠なれ」サージェントは演説を終え、観客は喝采する。
(翻訳:栗原紀子)
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ドキュメンタリー映画『ビハインド・ザ・カーブ―地球平面説―』(2018年)では、人々が科学実験で地球平面説を証明しようとするが......('Behind the Curve'、ネットフリックス配信中)
アンドリュー・ウェーレ
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