米中決裂なら「世界経済は景気後退入り」──米銀のリポート相次ぐ
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月21日 14時15分
<互いに関税を引き上げる報復合戦で泥沼化の一途をたどる貿易戦争。このまま続けば米経済のみならず世界経済も道連れになるとアナリストらが警告>
米金融大手モルガン・スタンレーは5月20日、米中間の貿易交渉が決裂すれば、世界経済が景気後退入りする可能性があると警告した。約1週間前にもバンク・オブ・アメリカが、世界の二大経済大国同士の貿易戦争は「世界経済を景気後退に追い込む」可能性があると警告したばかり。
ロイターの報道によれば、モルガン・スタンレーのアナリストたちは顧客向けのリポートの中で、次のように指摘した。「アメリカが新たに約3000億ドル相当の中国製品に25%の関税を課すことになれば、世界経済は景気後退に向かうだろう」
さらに、貿易戦争の激化と関税の引き上げで米経済に悪影響が及ばないよう、FRB(米連邦準備理事会)は政策金利を引き下げるだろうとも予測した。
一方、モルガン・スタンレーの米国株担当ストラテジストであるマイケル・ウィルソンは5月13日、ドナルド・トランプ大統領が中国に追加関税を課せばアメリカは景気後退に突入すると警告した。中国製品に対する関税のさらなる引き上げは、アメリカ企業に深刻な悪影響を及ぼすだろうと指摘した。
「対中関税がアメリカ企業の利益を圧迫」
ウィルソンは、「各企業が、価格転嫁やコスト削減で関税の追加負担を完全に相殺できるとは思えない。関税の引き上げは、各企業の利益を圧迫することになるだろう」と指摘。もしトランプが今は追加関税の対象となっていない残りの中国製品にも25%の関税を適用するという脅しを実行に移せば、「アメリカ経済が景気後退に傾く潜在的な可能性がある」と語った。
中国政府の交渉団のアメリカ訪問を数日後に控えた5月5日、トランプは中国製品に対する新たな関税引き上げを実施するとツイッターで発表した。さらにその後、2000億ドル相当の中国製品を対象に関税を10%から25%に引き上げ、中国はそれに対する報復として、アメリカからの輸入品600億ドル相当に対する関税を25%に引き上げた。
トランプは中国がアメリカ企業の知的財産を侵害していることと、対中貿易赤字についての不満を強調してきた。
こうしたなかトランプ政権は5月15日、中国の通信大手、華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置を発表した。米商務省は、ファーウェイがアメリカ企業から技術を購入することを禁止すると発表し、トランプはアメリカの国家安全保障に「容認できないリスク」をもたらす情報や通信技術にまつわる取引を禁じる大統領令に署名した。
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