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英連邦オーストラリアに英国王は必要か?

ニューズウィーク日本版 / 2019年5月25日 16時20分

アジアでは日本とタイが立憲君主制だ。ただし、君主の役割はタイのほうが重い。スペインでも、君主は国家的な危機の際に重要な役割を果たす。スコットランドの独立問題でも英国のEU離脱問題でも沈黙を守るエリザベス女王と違って、スペイン国王はカタルーニャの独立運動を強く非難した。

権威主義的なアラブ世界でも、君主制のほうが共和制よりもリベラルな場合がある。ヨルダンやモロッコは立憲君主制を採り入れているが、国王が強い権限を持つ。一方でサウジアラビアやアラブ首長国連邦は悪しき絶対王制の遺物だ。

150年前に経済学者ウォルター・バジョットは「象徴的な」権威と「実効的な」権力を分ける意義を見抜いた。バジョットの議論に従えば、立憲君主制は政治家の野心を抑えるのに必要な解毒剤だと言えるかもしれない。

もちろん、スイスやアイルランドのように、君主がいなくても政治家が尊大になり過ぎない国もある。

しかし一般論として言えば、監視役のいない国ほど権力が肥大化しやすい。君主の影響力が間接的で非公式であっても、スペインやノルウェーの首相が君主に定期的に報告する義務を負うことには重い意味がある。

政治が理性的なものであるならば、私たちも2頭の元首を戴く体制を捨てて、総督の肩書を「大統領」に改めればいいのだろう。だが政治が理性的であることはめったにないし、単なる象徴的な変化のために憲法を書き換える意味があるとも思えない。

今のオーストラリア憲法を改正するのは悪くない。例えば先住民の権利を明記すること。それは5ドル札から女王(次にはその息子)の肖像を消すことよりもずっと大事だ。



Dennis Altman, Professorial Fellow in Human Security, La Trobe University

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

<本誌2019年5月14日号「特集:日本の皇室、世界の王室」より転載>


デニス・アルトマン(豪ラ・トローブ大学教授)


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