トランプの対メキシコ関税、共和党「我慢の限界」
ニューズウィーク日本版 / 2019年6月6日 16時7分
<関税という警棒をむやみやたらと振り回す大統領に見識を示す時だ。今なら大統領の拒否権を覆すのに十分な票が集まるだろう>
ドナルド・トランプ米大統領が、メキシコ国境から不法移民が流入し続けていることに対する制裁として打ち出した対メキシコ関税は、議会共和党にとって「我慢の限界」になると、民主党のクリス・クーンズ上院議員は6月5日の朝、CNNで語った。大統領の言動については、以前から共和党議員も公式・非公式に懸念を表明していたという。
「共和党の多くの上院議員が内々に重大な懸念を表明している。大統領の行動、ロシア疑惑に関する特別検察官の報告書でわかった疑惑、大統領の司法妨害、などに関してだ」
クーンズによれば、共和党議員が「公然と」危機感を露わにした事件もある。昨年、サウジアラビアの反体制ジャーナリストだったジャマル・カショギが惨殺された事件でトランプがサウジアラビア政府の肩を持ったときは、共和党内からも批判の声が上がった。また密接な関係にある同盟国の鉄鋼製品に関税をかけたことや環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明したことにも、十数人の共和党議員が「懸念なり疑念を表明した」という。
だが残念ながら、これまではトランプの暴走を「減速させることも、止めることも」できなかった、とクーンズは言う。
共和党は見識を示すべきだ
批判の多い対メキシコ関税の発動が「我慢の限界」となり、「関税という警棒をむやみやたらと振り回し、親密な同盟国さえ殴ってしまう大統領に、上院共和党が何らかの見識を示し、落ち着かせる」ことを期待していると、クーンズは述べた。
共和党の有力議員は、メキシコに関税の脅しをかけるトランプを強く批判している。トランプは、中米諸国から集まった不法移民がアメリカとの国境を越えるのをみすみす許しているとして、メキシコ政府を批判。5月30日に突然、関税引き上げを発表した。6月10日からメキシコ製品に5%の関税を課し、メキシコ政府が十分な対策をとらなければ、徐々に引き上げて最高25%にするという厳しい内容だ。
4日付けのニューヨーク・タイムズによれば、メキシコへの制裁関税の発動について、ホワイトハウスから説明を受けた共和党の上院議員はほぼ全員、反対を表明した。
テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出・共和党)はホワイトハウスの弁護士チームに「賛成の声は1つもないと、(大統領に)伝えてほしい」と言ったという。メキシコへの関税は、実質的にテキサス州の企業と消費者に300億ドルの税負担を強いるに等しいと、クルーズは訴えた。
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