ドイツ有名ブロガー 偽のホロコースト体験談でタイトル剥奪
ニューズウィーク日本版 / 2019年6月6日 17時15分
さらに別の告発で、ヒングストが2017年にテレビインタビューで語った、インドのスラムに若い男性向けの性的カウンセリングを提供するクリニックを設置し、のちにドイツで難民向けに類似のサービスを開始したという主張も嘘だったことがわかった。
ホロコーストにまつわる話題で一儲けしようと企んだのは、ヒングストが初めてではないようだ。ドイツ公共放送ドイチェ・ウェレは過去に起こったいくつかの事例をあげている。たとえば、ホロコーストを逃れオオカミの群れに育てられたという、実話として出版され世界的な大ベストセラーとなったある本は、のちに作り話であることが発覚し、そのベルギー人著者は裁判所より出版社への22億円の返還を命じられた。
ヒングストの罪
ヒングストの場合は法的な問題は発生していないようだが、それでも彼女の行いは罪深い。それはヤド・ヴァシェムを冒涜したことだけではない。
これほど多くの人を騙すほどに真実味に富み、説得力のある作品が書けたのなら、小説として出版する道もあったはずだ。だが、ブログという安易な手段を選んでしまったことと、その結果により、人々の間では「ブログにはやはり信ぴょう性がない」という声が上がっている。真面目にブログに取り組んでいる人にとっては甚だ迷惑な話だ。
さらに、タイミングを懸念する声も多い。現在、ドイツを含めヨーロッパではアンチセミティズム(反ユダヤ主義)が高まっており、つい先日もドイツ政府が、攻撃対象になることを避けるためにキッパー(ユダヤ伝統の男性用帽子)の着用を控えるよう呼びかけたばかりだ(このとき、扇情的な写真大衆紙としてふだんはあまり評価の芳しくないビルト誌が、切りとって使える紙のキッパーを掲載し、ユダヤ人との団結を示すために着用を呼びかけたことで高評価を得ている)。
ヒングストはユダヤ系ではなかったが、今回の捏造騒動がユダヤ人によるものと勘違いした人々や、ホロコーストはなかったとする歴史修正主義者たちに悪用されないように、目を見張る必要がある。
ゴールデン・ブロガー賞を受賞したマリー・ソフィー・ヒングスト Inside Wirtschaft
モーゲンスタン陽子
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