日本と韓国の和解をアメリカが望む訳
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月2日 15時45分
財界・経済界の連携重視
そこで注目したいのが次世代通信規格の5G問題だ。韓国政府は中国製の機器を容認する姿勢を見せるが、米日韓の民間企業は結束して華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の排除網を築こうとしている。
昨年10月、韓国のサムスンは日本のNECと組んで5G関連技術の開発に取り組むと発表した。今年6月には米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)との提携も発表した。
アメリカはこの状況を生かすことができる。まずは日韓それぞれに共通の国内問題の解決に役立つ技術協力を促すことだ。韓国にも高齢化の危機が迫っている。高齢者医療や健康関連商品といったシルバー市場には無限の可能性がある。
急成長する新興国市場に打って出るのもいい。東南アジアに進出して経済を多様化させるという文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「新南方政策」はなかなか野心的だ。とはいえ韓国政府の存在感は、まだ東南アジアでは薄い。
対してODA大国の日本は15年に、インド太平洋地域で道路や鉄道、橋梁、港湾などを整備する「質の高いインフラパートナーシップ」構想を打ち出している。しかし中国は技術面でも実力を付け、今やインフラ整備で日本の優位を脅かす。15年にはインドネシアの高速鉄道計画で、日本に競り勝って契約を獲得した。世界中に中国製品を広める国家戦略「中国製造2025」も健在で、再生可能エネルギーや人工知能(AI)の技術では日韓をリードしている。
ところがエネルギーやサイバーセキュリティーなどの重要インフラに対する安全保障上の脅威に関する韓国政府内の政策論議は、まだ十分に深まっていないようだ。民間の原子力産業に関する議論も、エネルギーの持続可能性より核不拡散の問題に偏り、戦略的に狭い。
一方、日本とアメリカは1973年の石油ショック以来、幅広くエネルギー安全保障に取り組んできた。両国は今、原油価格の変動に影響されやすいインド太平洋地域諸国のエネルギー確保を支援している。
例えば日米戦略エネルギーパートナーシップ(JUSEP)は、アメリカのアジア・エッジ(エネルギーを通じたアジアの開発と成長の促進)構想と日本政府による各国のエネルギー産業に対する100億ドル規模の支援を連携させる試みだ。
JUSEPは既にインドとスリランカで液化天然ガスや再生可能エネルギーの供給を支援し、インド太平洋地域のさまざまな軍事的・商業的な要所を支配しようとする中国の「真珠の首飾り」戦略に対抗している。
この記事に関連するニュース
-
日韓防衛交流を再開へ…レーダー照射問題で再発防止策など確認見通し、近く防衛相会談
読売新聞 / 2024年5月20日 5時0分
-
中露首脳会談、経済・安保面の「戦略的関係の深化」へ共同声明…米欧への対抗姿勢を改めて強調
読売新聞 / 2024年5月16日 22時26分
-
【独占取材】岸田首相が本誌に語った「防衛力の強化」と「外国人労働力」の必要性
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月10日 16時4分
-
単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日本経済の現実...物価対策、移民政策への考えとは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月4日 20時51分
-
「フィリピン」経済面で「米・日」との関係強化、中国の脅威に対抗
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月22日 7時15分
ランキング
-
1焦点:米支援遅れに乗じロシアが大攻勢、ウクライナに戦線崩壊の危機
ロイター / 2024年5月20日 18時59分
-
2イラン大統領死亡、中東の状況注視する=林官房長官
ロイター / 2024年5月20日 16時50分
-
3ロシア企業が開発のAI、「ひどい臆病者」と前大統領激怒…ウクライナ問題に「勉強中」とのみ回答
読売新聞 / 2024年5月20日 17時23分
-
4台湾の頼総統、中国に軍事威嚇の停止呼びかけ 「世界平和への挑戦」
産経ニュース / 2024年5月20日 13時35分
-
5イラン大統領、事故で死亡=不時着ヘリ発見
時事通信 / 2024年5月20日 13時39分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください