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ラガルドECB総裁を待つ難題 エコノミストが中銀トップの時代は終わった

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月8日 18時45分

一方、こうした国々に受けのいい政策を採用すれば、ユーロ圏が崩壊する可能性が高い。ユーロ圏の安定が遅々として進まず、イタリアの債務問題が危険な状況にあるなかで、破滅的な危機が起きる可能性は無視できない。誰がECBの総裁になるかは、ヨーロッパだけでなく、世界の金融システムにも影響を及ぼすのだ。



中央銀行での実務経験がないラガルドは、ECBのほかの幹部たちに頼ることになる。特に大きな役割を担うのが、6月にチーフエコノミスト兼専務理事に就任したフィリップ・レーンだ。アイルランド中央銀行総裁から転身したレーンは、金融緩和に前向きとみられている。

ほかのECB理事の顔触れも大きな意味を持つ。とりわけ、ドラギの盟友だったブノワ・クーレ専務理事の後任が誰になるかは見過ごせない。

IMF時代のラガルドはイデオロギーの劇的な転換を推進し、IMFをかたくなな緊縮財政主義から脱却させた。ECBでも同様の辣腕を振るえれば、大胆な金融緩和を辞さなかったドラギの路線を継承できるだろう。

【参考記事】IMF最後の切り札はイケメンすぎるインド中銀元総裁。華麗なる転身なるか

危機への対処に関しては、ラガルドには既に実績がある。フランスの経済財務雇用相だった2008年に世界金融危機が起きるとその対応に尽力し、早い段階でヨーロッパ共通の対策が必要だと訴えた。しかしこのとき、その主張はドイツのメルケルに阻まれた。

もし将来、ユーロ圏で深刻な危機が再び持ち上がれば、ラガルドはECB総裁として、2008年より強力な権限で対策を推進できるだろう。もっとも、その権限を振るわずに済むのが一番なのだが。

From Foreign Policy Magazine

<2019年7月16日号掲載>


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アダム・トゥーズ(コロンビア大学歴史学教授)


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