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アボリジニの聖地「登らないで」の声を無視、禁止前に駆け込み客が殺到

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月17日 19時0分

豪公共放送のABCは、近隣のキャンプ場が定員を超えてしまっているため、道路脇で違法にキャンプする人が出ていると伝えている。道路脇でのキャンプを悪いことと捉えていない人が多いようだが、実際は保護区域でのキャンプとなり違法だという。適切な設備を使わないうえ、ごみが不適切なところに捨てられるなどの問題も起きている。ウルルから100キロ離れたキャンプ場でも、利用客は前年比20%増となっており、使用済みトイレットペーパーや汚物などを道路脇に捨てていく人がいるという。

また、トイレはウルルのふもとに1つあるだけだが、排水管が詰まっていたという話もある。英ガーディアン紙によると、一旦登り始めると、ウルルの中にはトイレがない。そのせいで、岩の中で用を足してしまう人もいる。



さらに豪ニュースサイトNews.com.auは、たくさんの観光客が登ることで、ウルル自体も損傷を受けている、と報じている。大きな白い傷が、遠くからでも見えるというのだ。

「ディズニーランドではない」聖なる場所

ウルルを含むこの地域一帯は、1985年10月26日にアナング族が所有権を取り戻し、管理している(ただし同年から99年間は豪政府に貸し出し中)。これまで、アナング族の人たちは自分たちの聖なる場所に登らないでほしい、と観光客に再三訴えてきたが、登山する人は後を絶たない。国立公園への入場料(大人25豪ドル)はアナング族の貴重な収入源になるため、登山を厳しく禁止できない苦しい現状があったようだ。

ウルル登山口の前には、「登山は禁止されていません。しかしウルルに登らないことで、私たちの法と文化を尊重してくださるようお願いします」と書かれた看板が立っている。ウルルのふもとを歩いてこの場所への理解を深めてほしい、とも書かれている。観光客はこの看板を通り過ぎ、ウルルに登ることになる。

ウルル・カタ・ジュタ国立公園の管理委員会は2017年、全会一致で登山の禁止を決定した。News.com.auによると当時、管理委員会会長でありアナング族のメンバーでもあるサミー・ウィルソン氏はこの投票に先立ち、次のようなスピーチをしたという。

「ここは非常に重要な場所です。ディズニーランドのような遊び場でもテーマパークでもありません。もし私が他の国へ行き、神聖な場所や立ち入りが制限されている場所があったら、入ったり登ったりせずに、尊重します。この場所はアナングにとっても同じ。私たちは観光客を歓迎します。観光を止めたいわけではありません。ただ登るのをやめてほしいのです」



Tourists flock to climb Uluru before October ban

松丸さとみ


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