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ぶっ飛びエリートから庶民の味方へ脱皮?──マクロン劇場は正念場の第2幕へ

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月18日 15時30分



マクロンはREMを第1党にすることはできなかったが、僅差の2位に押し上げることには成功した。国民連合との得票率の差は1ポイント未満だったので、マクロンはある意味で「勝った」と言ってもいい。

それに劣らず重要なのは、環境保護派の欧州エコロジー・緑の党を除く他の政党が軒並み自滅した結果、第2幕のカーテンを上げる準備が整ったことだ。事前のリハーサルは、安心と心配が交互に現れる内容だった。

マクロンはある程度まで、幕間に導入したテーマを追求するようだ。6月のスイスのラジオとのインタビューでは、第1幕における官僚主義的傲慢と君主的形式主義を謝罪。政府はさまざまな問題の解決策を出したが、「普通の市民から懸け離れて」いたと告白した。

その全てが「根本的な誤り」であり、抗議行動に訴えた人々の「痛み」を実感した今は、国民との関係に「人間らしさと身近さを改めて導入」する決意だと、マクロンは主張した。

同じ日のILO(国際労働機関)での演説では、人々が「もはや民主主義は暴走した資本主義による不平等から自分たちを守ってくれない」と感じたとき、権威主義とポピュリズムが台頭すると警告。「少数による富の奪取」を許すシステムではなく、「誰もが自分の取り分を確保できる社会的市場経済」の創造をヨーロッパに呼び掛けた。

だが、そもそも取り分が分配されなければ、どうしようもない。国民大討論の参加者は、官僚機構の複雑さに直面するたびに絶望を感じると訴えていた。

そこでマクロンは現在、国民にサービスを「タイムリーかつ具体的な形で届ける」ことを閣僚に求めている。効率アップの手段は、管理指揮系統の分散化を図り、地方の公務員により大きな裁量を与えることだ。

この提案に目新しい部分はほとんどない。フランスでは50年以上前から行政改革の必要性が叫ばれてきたが、改革の「障害物」は今もほぼ無傷で残っている。そのせいもあって、左派はマクロンを信用していない。環境保護派もマクロンの本気度を疑っている。

移民制限に舵を切るか

移民問題への対応にも疑念がある。フランスの人権オンブズマン、ジャック・トゥボンは昨年の報告書で、マクロン政権は移民たちのスラムを取り壊し、ホームレスになった人々に代替の住居の提供も拒否することで、「移民を見えない存在」にしようとしていると非難した。

マクロンは最近の記者会見で移民問題を持ち出し、「開放的」で「包容力のある」フランスの愛国心を称賛する一方、開放的とは無制限の意味ではなく、包容は排他性を伴うと主張して多くの記者を驚かせた。

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