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参院選、比例「特定枠」の曖昧さと地域間格差 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月23日 18時20分

どうして禁止なのかというと、そもそも特定枠というのは「合区」によって県の選挙区から外れた候補を救済するためで、多数の得票が見込めないからです。例えば、今回特定枠で当選した三浦靖候補(自民)は、得票数3295票で当選しています。この人は島根県の衆議院議員でした。島根県が鳥取県と合区になって、今回その選挙区選挙は鳥取出身の政治家(今回は舞立昇司氏)が候補になったので、島根の三浦氏は「特定枠」に回った格好です。



この「鳥取・島根」選挙区ですが、次回の参院選は島根出身者が選挙区に出て、鳥取の候補は「特定枠」に回る、そんな運用を前提とした制度なのです。では、どうして「選挙運動が禁止」なのかというと、「運動したのに得票数が少ない」と不信任を受けた印象になるので、そもそも運動を禁止しておくという発想のようです。その結果、有権者から見れば信任を得たかどうか不明な政治家が、任期6年の参議院議員として当選することになりました。

またせっかく一票の格差を是正するために「定数是正」を行なったのに、人口減少県の代表数は事実上確保されてしまっているという問題もあります。この点も批判されてしかるべきでしょう。

一方で、この「特定枠」を別の意味で活用したのが「れいわ新選組」です。特定枠に重度の障がい者の候補を立てて、党首の山本太郎氏の集票力を使って2人を当選させたのです。つまり「選挙運動ができない」制度を逆手に取って、「障がいのために選挙運動が難しい」候補を当選させるのに使ったというわけです。発想としては興味深いですが、れいわの「作戦」も参院の選挙制度安定化への真摯な姿勢とは少し違うように感じられます。

この「特定枠」を生み出した「定数是正」ですが、昨年2018年7月に成立した「6増案」が今回から適用されるものです。自民党が「鳥取・島根」と「徳島・高知」の2つの合区で使うために、比例代表を4議席増(一回の選挙では2増)としたのに加えて、埼玉選挙区を2議席増(一回の改選では1増)としたものです。

問題は、この埼玉(定数8議席、改選4議席)とか東京(定数12議席、改選6議席)あるいは大阪(定数8議席、改選4議席)といった大選挙区があるという点です。

例えばですが、「1人区」と「6人区」では、同じ一票であっても選択の機会が全く違うわけです。1人区の場合は、自民系か旧民主・民進系の選択になることが多いわけです。特に今回の場合は、「野党共闘」候補も多かったので、そうなると一部の有権者としてはまさに消去法の選択を強いられるわけです。

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