ソーダストリームが、ユダヤ・パレスチナ共存の未来を切り開く
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月24日 17時48分
バーンバウムの話を聞いていると、イスラエルにおける民間部門の役割について考えさせられる。1つの企業が国全体の願望を代表することは可能なのか。資本主義とナショナリズムやシオニズムをどうやって一致させるのか。国家はどの程度までその国の経済に影響を与えるのか。あるいは、その逆はどうか。
「バーンバウムはリベラルなシオニストのように話す。イスラエルでは同様の動きはほかにもあるが、CEOの立場で語るのは彼だけだ」と、ヘバーは本誌に話した。「BDS運動やさまざまなボイコットの圧力に対するソーダストリームの対応は際立っている」
イスラエルの社会政策を研究するタウブ・センターの所長で経済学者のアビ・ワイスは、ソーダストリームの政治的メッセージはユニークだが、医薬品など他の業界では、ユダヤ人とアラブ人が同じ職場で働いている例はあると指摘する。
「こうした業界では差別は全く問題にならず、あらゆる人が共生し、共に働いている」と、ワイスは本誌に語った。「ただ、ソーダストリームは普通ならなかなか職に就けない人たちを雇った点が他とは異なっている。西岸でもそうだったし、南に移転してベドウィンを雇ったときもそうだ」
「平和をつくっている」
西岸から移転したため、ソーダストリームはイスラエル政府が提供する優遇措置の一部を受けられなくなった。それでも同社を批判する声は収まらない。
イスラエルでは以前、ベドウィンを安い労働力として活用するため強制的に定住させる計画があった。この計画は国内外の激しい批判を浴びて葬り去られたが、ソーダストリームがやっていることはその焼き直しにすぎないと、一部の人々は言う。
ソーダストリームは貧しいベドウィンを救済すると見せ掛けて、「アメリカ先住民を強制的に『文明化』した白人入植者」と同じことをしていると、BDS運動のバルグーティは指摘する。ベドウィンの伝統文化を破壊している、というのだ。
ソーダストリームの投資はいまネゲブ砂漠で起きている開発ブームの一部にすぎない。「イスラエル陸軍の指揮本部がテルアビブからネゲブ砂漠に移転されることになり、それに伴って商業施設、住宅、学校、医療機関など、あらゆる施設の建設が進んでいる」と、エルサレムのシャレム・カレッジ副学長で著述家のダニエル・ゴーディスは本誌に語った。
「ネゲブ砂漠はイスラエル最大の最も居住に不向きな地域であり、そこで生活できることを示せれば建国の志を貫けると、ベングリオンは考えた」と、ゴーディスは説明する。「ユダヤ人であれば当然、この考えを実践しようとする」
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