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インドのカシミール「併合」は、民族浄化や核戦争にもつながりかねない暴挙

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月7日 21時0分

しかし、インドが抱える最も燃えやすい紛争相手はパキスタンだ。1947年にイギリスから分離独立した当初からパキスタンはインドと国境をめぐって対立し、すぐに第1次印パ戦争が勃発した。1965年の第2次印パ戦争と1999年のカールギル紛争は、印パともにカシミールの領有権を主張したことから生じた紛争で、1971年の第3次印パ戦争は、パキスタンから独立しようとした東パキスタン(現在のバングラデシュ)をインドが支援し、全面戦争となった。



カシミール地方の最前線ではインド軍とパキスタン軍の間で血なまぐさい衝突が続いてきた。ジャンムー・カシミール州はパキスタンと同じイスラム教徒が多く、数十年にわたるインドへの反政府運動で数万人が犠牲になってきた。それを今回インド政府の直轄にしたことで、「民族浄化が始まる恐れがある」と、パキスタンのイムラン・カーン首相は強く警告した。

一方インドは、パキスタンがイスラム過激派グループのテロを支援していると非難する。たとえば、パキスタンに拠点を置くジェイシモハメドは今年2月、カシミールのプルワマでインド人数十人が死亡した自爆テロで犯行声明を出した。

この自爆テロをきっかけに、インドはパキスタン国内の武装勢力の拠点を狙って空爆を行った。その報復としてパキスタン空軍は攻撃を仕掛け、空中戦でインド軍の戦闘機を撃墜。インドもパキスタンも核保有国だけに、世界は固唾を呑んで見守った。結局、パキスタンが拘束したインド軍のパイロットを「和平への意思表示」として解放したことで事態は収束した。

ジャンムー・カシミール州の自治権剥奪を受けてカーン首相は8月6日、インドがカシミールを直轄地としたことについて、「プルワマの自爆テロに似た(イスラム教徒による)テロ事件が再び起きるだろう。そして、わが国はまったく関係がないのに、インドは今度もパキスタンがテロリストを送ったと非難するだろう」と警告した。

仲裁提案をインドは拒否

カーンは、こうした一連の出来事が両国間の核戦争にエスカレートすることを恐れていると述べつつ、パキスタンはカシミール地方を防衛する必要があると言った。モディ政権と与党インド人民党(BJP)、モディと関係の深いヒンドゥー至上主義団体「民族義勇団(RSS)」が「人種差別的なイデオロギー」を追求していると非難した。

カーンは、カシミール問題の解決に向けて国際的な支援を求め、7月22日にドナルド・トランプ米大統領とホワイトハウスで会談したが、状況は悪化する一方でここまできた。トランプは「モディ首相次第だ」と言ったという。

(翻訳:栗原紀子)


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トム・オコナー


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