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マネーの主役は貨幣から人間へ──「マネー3.0」の時代

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月14日 16時0分

これらの仮想通貨は、ブロックチェーンという書き換え不可能な記録をベースにすることで、その正当性を幅広く証明することができる。つまり、あらゆる通貨が必要とする信用のネットワークを構築するパワーを持っている。

これがマネー3.0だ。それは人々がお金を生み出す時代だ。

人々って誰かって? それはビットコインやイーサリアムを作った人々。フェイスブックを作り、来年にはリブラという独自の仮想通貨を作ろうとしている人々。現在取引されている無数の仮想通貨を作った人々だ。

こうした仮想通貨の多くは、商品やサービスと引き換えに、他人に譲り渡すことができるという意味で、カネのように機能する。そしてこれらの通貨は今、オープンソースで作られ、グローバルに流通している。これまではあり得なかったことだ。

カネが人間に奉仕する時

確かに、こうした通貨の多くは信用のネットワーク効果を生み出すことができず、いずれ消えていくだろう。だが、いくつかは生き残る。それはフェイスブックと競合する通貨かもしれないし、都市が発行する通貨かもしれない。あなたが知っている人や、ソーシャルメディアでフォローする人が作る通貨かもしれない。結局のところ、カネは人と人との信用システムだ。

デジタルネットワークの進歩によって、私たちはこれまで以上に、お互いを結び付けるコミュニケーションを作り、監視し、アップグレードできるようになった。それは知らない人や、国家による価値の裏付けのない通貨を信用することを可能にする。

新しい通貨は、ソフトウエアのようにプログラム可能であり、さまざまな目的に合わせて設計することができる。例えば、取引のたびに税金を支払ったり、買い物をするたびに代金の一部を環境保護活動に募金したりする仕組みを作ることができる。



こうした実験が「仮想通貨化」という新しい領域でどんどん進んでいる。それは分散型の性質を持つから(つまり誰かが一元的に管理しているわけではないから)、仮想通貨化の流れを止めるのは非常に難しい。

そのうち芸術家や非営利団体、スタートアップ、学校、近隣住民などのための仮想通貨がいくつも誕生して、互いに運用可能な新しいネットワークを構築し、それまで局所的だった社会的な構造が、グローバルなオンライン(とオフライン)コミュニティーに組み込まれるだろう。

これがマネー3.0だ。それは人間のコラボレーションの在り方を永遠に変える。

経済学は「カネの科学」と考えられることが多いが、実は「インセンティブの科学」だ。カネは、私たちのさまざまな利益の価値を表現するツールにすぎない。だがそれは、その目的をあまり上手に果たせていない。カネで幸せや人と人のつながりを説明するのは難しいし、心や気持ちの問題を語るとき、カネが絡んでくることを不快に感じる人は少なくない。

つまるところ、カネは人間の発明物だ。私たちは今、人間のためにカネを作り直すことができる。カネのために、私たちを作り直すのではなく。

<本誌2019年8月13&20日号掲載>


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ガリア・ベナッツィ(分散型仮想通貨取引所バンコール共同創設者)


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