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都市部で広がる子どもたちの「勉強時間格差」

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月21日 16時30分

勉強しない子がどういう意識を持っているかも気になる。前出の苅谷教授の調査によると、親が低学歴のグループで勉強時間の減少が大きいのだが、この群の生徒の自己有能観は高い。とりわけ、学校の成績での成功物語を否定する生徒の自己有能観が高いという結果が出ている(前掲書)。

そこから分かるのは、下層の生徒が自発的に勉強(学び)から降りている、ということだ。「学校での勉強が全てではない、やりたいことをすればいい、自己実現が大事だ」という言説があるが、勉強が振るわない(下層の)子どもはそれに飛びつきやすい。情報や刺激が飛び交っている都市部では、特にそうだろう。これが放置されるなら、じわじわと静かな形で、日本社会の階層分化が進むことになる。

学校での勉強(学び)を否定し、個性や自己実現を美化する風潮が強まっているが、社会の構成員が習得すべき共通教育の内容が疎かにされるのは良くない。個性化・多様化とは、しっかりとした共通教育(教養)の上に立つべきものだ。

子どもの勉強時間格差から、日本社会の階層分化の兆候が見て取れる。勉強しないのは、どういう子どもか? 家庭環境や意識などを調査してみる必要があるだろう。「勉強から降りるのは当人の自由だ」と、早い段階から切り捨ててしまうのは、教育を受ける権利の侵害にほかならない。

<資料:文科省『全国学力・学習状況調査』(2019年度)>








舞田敏彦(教育社会学者)


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