傍若無人か、新たな核軍拡競争を招く米ミサイル実験
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月21日 19時0分
さらにリャブコフは「Mk41垂直発射システムを使用してミサイルが発射された」ことを取り上げ、このシステムはSM-3迎撃ミサイルや、地対地および地対地巡航ミサイルが発射できる万能型であることを指摘した。「遺憾としかいいようがない事態だ。アメリカは明らかに軍事的緊張を煽る方向に舵を切った」
アメリカのミサイル実験を非難するロシアに同調したのは中国だ。INFの締結国ではないが、中国はアメリカに条約維持を求めたロシア政府を支持してきた。
アメリカによる今回の実験について、中国外務省の耿爽報道官は、「アメリカがINF条約を公式に離脱して3週間もたたないうちに」起きたことを指摘し、実験を非難した。
「アメリカによるこの動きは、新たな軍拡競争を引き起こし、軍事的対立の拡大と世界および地域の安全保障に深刻な悪影響をもたらす」と、彼は述べた。「アメリカは、時代遅れの冷戦の考え方とゼロサム・ゲームの概念を放棄すべきだ。そして武器開発を抑制し、既存の軍縮の枠組みを真剣に守り、グローバルな戦略的バランスと安定性、そして世界と地域の平和と安全に貢献しなければならない」
INF条約からの離脱前、アメリカはロシア、中国との新しい3国間核ミサイル条約の交渉を提案したが、中国は拒否した。中国は、アメリカとロシアは2大核保有国として核不拡散については特別に責任があると主張している。
(翻訳:栗原紀子)
※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直属・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。
トム・オコナー
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