ロシア爆発事故で医師たちは放射線のリスクを何も知らされなかった
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月23日 14時0分
「言い換えれば、保健省の職員らは医療スタッフの被ばくを否定しなかった。医療スタッフは被ばくした負傷者のそばで5~6時間を過ごし、彼らの手術も行った。その対価は500ルーブル(約800円)だ」
放射線被ばくの可能性について警告を受けていれば、医療スタッフは防護マスクをつけて自分たちの身を守ることもできたはずだと、この医師は語った。また、将来的にも法的手段に訴えることができないよう、証拠となる書類や医療記録は全て押収された。
匿名の医療スタッフの1人がロシアの独立系新聞ノバヤ・ガゼタに語ったところによると、この病院はその後、放射性同位体セシウム137の痕跡が見つかり、除染を行わなければならなかった。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、爆発が兵器の開発中に起きたことを認めているが、具体的にどの兵器だったかは明らかにしていない。
プーチンは8月21日、訪問先のヘルシンキでの会見で、放射線のリスクは一切ないと否定した。「軍の施設で、有望な兵器システムの開発を行っている。それについて隠し立てすることはない」と語った。
(翻訳:森美歩)
※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直属・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。
ブレンダン・コール
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