韓国・文在寅政権、不支持率が上回ったことがわかる前日まで、GSOMIA延長が有力視されていた
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月26日 18時30分
また、2016年1月と9月に北朝鮮が核実験を行い、在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に中国が反発する。安保協力の重要性が増したことを受け、16年11月23日、長嶺安政駐韓日本国全権大使と韓民求(ハン・ミング)韓国国防部長官が署名したが、国民への説明が行われることはなかった。
朴槿恵前大統領が崔順実氏に機密情報を漏らした疑惑が報じられ、退陣を求める声が広がりはじめていたのである。当時、文在寅現大統領が顧問を務めていた「共に民主党」は、協定にある韓国が入手した情報を日本に伝えるという部分を取り上げ、大統領解任要求に利用。国民は意義と内容を理解しないまま59%が反対した。
米国が公式論評で「韓国」ではなく「文在寅政権」と呼ぶのは異例
そして、GSOMIAを延長しないという発表に、米国国務省と国防総省は「文在寅政権」への強い懸念と失望を表明する。米国が公式論評で「韓国」ではなく、「文在寅政権」と呼ぶのは異例のことだ。
破棄決定はスティーブン・ビーガン米国務省北朝鮮政策特別代表の訪韓中だったことから米国の了解を得たと見る向きもあったが、米国政府は明確に否定。米国の理解を得たという青瓦台の発表を「うそ(lie)」と断じた。
中国は人民日報が中国外務省の協定批判を紹介し、破棄決定を歓迎する意向を滲ませる。北朝鮮も国営通信を通じて協定破棄を求めていた。
韓国より日本が多くの恩恵を受けている?
GSOMIAに基づく情報交流は、日本政府が韓国向け輸出規制を発表した後も行われている。締結直後の2017年、北朝鮮が中長距離ミサイルを数回発射し、日韓両国は日本が有する着弾情報と韓国が有する発射情報を共有した。一方、2019年は短距離ミサイルを発射しており、韓国が日本に情報を提供する情報交流が主体で、韓国より日本が多くの恩恵を受けていると文政権が主張する根拠になっている。
いっぽう、事あるごとに南北協力を唱える文大統領に、北朝鮮は応じない姿勢を示している。現体制を維持する場合、文大統領の残りの任期は3年弱で、金正恩氏の首脳としての実質的任期はこれをはるかに上回る。協定や合意など約束事の破棄を繰り返す文大統領と協調する可能性は限りなくゼロに近い。
YTN NEWS
佐々木和義
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