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発電量は原発600基分、課題はバードストライク──風力発電の順風と逆風

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月10日 17時45分

世界全体では18年に前年比9.5%、5130万キロワット増えて5億9155万キロワットとなった。1基当たりの効率化、巨大化が進み、世界の導入量は年率13%と依然高成長を続けている。(世界風力会議(GWEC))

欧州など導入が進む地域では既に陸上に設置できる余地が少なくなってきており、開発の舞台は海に移りつつある。洋上風力は2010年以降に増え始め、現在風力発電全体の4%ほどに当たる。



洋上分野では英国が796万キロワットと世界トップの導入量を誇り、洋上だけで日本の風力全体の2倍以上を賄っている。洋上は、2位がドイツで638万キロワット、中国が459万キロワットと続く。

特に英国は、風力による国全体の電源比率を現在の約7%から2030年までに3分の1まで引き上げる計画で、開発を加速させる。世界最大の洋上風力も英国の沖合にある。18年に操業を始めた「ウォルニー・エクステンション」で風車式タービン87基を備え、出力は計約66万キロワットに及ぶ。

後れを取る日本は「地元対応」も課題

日本も本腰を入れ始めているが、2030年に1000万キロワットという数字は、全体の電源構成比1.7%程度とされており、英国の比ではない。また、1000万キロワットに向けた達成率は現在4割ほどで、全電源に占める風力の割合は1%に満たない。日本は風力の分野で欧米、中国の背中を追っているのが実情だ。

推進官庁の経済産業省も、「我が国と同様に四面を海に囲まれている英国」と比較して日本の導入量が「わずかだ」と説明。既に欧州は競争期に入っていると指摘し、日本での市場活性化の必要性を説いている。

そうした背景から、ここに来てテコ入れの動きも目立っている。

経済産業省と国土交通省は7月末、洋上風力を優先的に開発する「有望4区域」として、秋田や長崎など各県の沖合を指定した。既に準備が整っている地域とされ、今後具体的な計画が進む。また8月には、経産省の有識者会議が、再エネの「固定価格買取制度」(FIT)を抜本的に見直す中間整理案をまとめた。事業用太陽光と風力は、コスト低下を踏まえて順次、競争入札に移行させる方針を示した。こうした施策を受け、導入が加速していくと期待される。

ただ、冒頭にある通り、発電設備に鳥が衝突しないようにするといった対策が急務でもある。対策が必要なのは空だけではない。

ブレードが落下する事故も続出している。幸い人的被害は出ていないものの、今年に入ってからも青森県や鹿児島県で相次いだため、経産省は8月に「小形風力発電設備に対する安全確認のお願い」として事業者に注意喚起した。

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