新型核兵器もアジア配備も──INF後の米ロ軍拡競争が始まった
ニューズウィーク日本版 / 2019年9月9日 18時0分
この新型ハイテク兵器には、ICBM(大陸間弾道ミサイル)のサルマートや極超音速滑空弾頭アバンガルド、極超音速空対地ミサイルのキンジャール、原子力巡航ミサイルのブレベストニク、水中ドローン(無人機)のポセイドンが含まれる。また、今年に入りプーチンは、極超音速潜水艦発射巡航ミサイル「ツィルコン」の実験を行っていることも明らかにした。
プーチンに言わせれば、新型兵器の開発は2002年にアメリカが弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を離脱して以降の「軍拡競争」への対応として、そして東欧諸国にアメリカが配備したミサイル防衛システムへの対抗上、欠かせないものだった。トランプはミサイル防衛システムの構築をさらに進めると明らかにしているし、8月には冷戦期に結ばれたもう1つの軍縮条約、中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱している。
アメリカに言わせれば、ロシアによる巡航ミサイル、ノバトル9M729の配備はINF条約違反だし、ロシアに言わせればルーマニアやポーランドのミサイル防衛システムにおいて攻撃用ミサイルに使われるのと同じ発射装置をアメリカが配備したことこそ条約違反だ。双方とも相手の主張を否定しているが、本誌の取材ではアメリカは8月下旬、この発射装置を使って巡航ミサイルの発射実験を行った(米国防総省はスペックが異なるとしている)。
プーチンは5日、アメリカが中距離ミサイルの配備を行わないなら、ロシアも配備を控える用意があるとの考えを示した。プーチンはまた、8月にアメリカが行った中距離ミサイルの発射実験を受けて、同様のミサイルの開発を命じたと述べた。
また、アジアへの地上発射型の中距離ミサイルの配備を検討しているとするマーク・エスパー米国防長官の発言にも、ロシア政府は警告で応じている。ちなみに日本の安倍晋三首相は5日、東方経済フォーラム全体会合の席上、アメリカからミサイル配備の打診は受けていないと発言しているし、韓国政府が8月に発表した2020~2024年国防中期計画にも配備案は含まれていない。
(翻訳:村井裕美)
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「無限の射程距離」をもつ超音速飛翔滑空兵器「アバンガード」
トム・オコナー
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