金融緩和競争は激化へ、厳しい判断を迫られる日銀──9月決定会合の予想と市場の反応
ニューズウィーク日本版 / 2019年9月10日 16時0分
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1 「緩和手段については、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速等、様々な対応があり得る」(2019.7.31総裁記者意見より)。
なお、金融緩和策として最もオーソドックスな手段は「金利の引き下げ」に関するもの(マイナス金利深堀り、長期金利目標引き下げ、国債買入れ増額)だが、既に過去最低レベルにある銀行貸出金利をさらに圧迫し、金融システムの不安定化や金融仲介機能停滞のリスクを高める恐れが強い。また、2015年以降に鮮明になったように、金利感応度が高い不動産向け貸出に資金が集中し、不動産市場の過熱や歪みを助長する恐れもある。
日銀金融政策の見通し
以上の点を踏まえ、次に日銀による今月の政策決定の見通しを考える。日銀の決定内容は、欧米中銀の金融緩和を受けた直前の市場動向によって変わり得るが、メインシナリオとして、概ね安定した(大幅な円高・株安が進んでいない)市場環境にあることを前提とすれば、金融政策を多少変更し、緩和色を漂わせる程度の変更がなされると見ている。具体的には「金利に関するフォワードガイダンスの延長」と「長期金利許容レンジの拡大(下限引き下げまたは撤廃等)」が決定される可能性が高い。
既述のとおり、今回、欧米が金融緩和に踏み切るなかで日銀が全く動かなければ、「緩和負け感」が鮮明になり、円高の引き金を引くことになりかねない。一方で、現段階で本格的な追加緩和に踏み切れば、副作用を強めるうえ、今後、世界経済が失速したり、円高が急激に進んだりした場合の対応余地がその分無くなってしまうためだ。
その点、現在、「当分の間、少なくとも2020年春頃まで」とされている現行金利水準維持に関するフォワードガイダンスを「当分の間、少なくとも2020年末頃まで」などに延長することには殆ど実害がない(効果もないが)。そもそも、今後の経済・物価情勢を鑑みれば、2020年内に金利を引き上げることは極めてハードルが高い。実際、黒田総裁も現行金利水準が維持される期間について、「2020 年の春より長くなる可能性も十分ある」との発言を頻繁に行っている。
また、長期金利許容レンジについては、昨年7月に柔軟化が行われた際に、「プラスマイナス0.1%の倍程度の幅を念頭にする」(つまり、▲0.2%~0.2%程度)とされたが、最近の長期金利は▲0.2%を明確に下回って推移している。日銀が▲0.2%を下限として死守するために国債買入れを本気で縮小すれば、金融緩和の後退と捉えられて円高が進む恐れがあるため、半ば放置されている状況にある。そして、米金利の大幅な回復が当面見込めない以上、日本の長期金利が早期に上記レンジ内に戻る可能性も低い。従って、今月の決定会合において、長期金利許容レンジの拡大(下限引き下げまたは撤廃等)が行われたとしても現状の追認に過ぎないうえ、説明を加えることで多少の緩和的色彩を加えることも可能になるだろう。
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