対イラン代理戦争も辞さないネタニヤフの危険な火遊び
ニューズウィーク日本版 / 2019年9月11日 18時45分
イスラエルはベイルートの攻撃を否定も肯定もしていないが、シーア派政党と民兵の連合であるファタハ連合はイスラエルを激しく非難。「事件の全面的な責任は、有志連合、特にアメリカにあり、われわれに対する宣戦布告だと捉えている」という声明を出した。
さらに状況を複雑にしているのは、トランプ政権の相反する対応だ。まずポンペオは「イラン革命防衛隊による脅威から自らを守るイスラエルの権利」を支持すると述べた。
だがその後、米国防総省はイラク民兵によるイラク駐留米軍への攻撃を懸念したようで、輸送隊への攻撃についてアメリカの関与を完全に否定する声明を発表した。
「われわれはイラクの主権を支持し、イラクで暴力を扇動する外部の行為者によるあらゆる潜在的な行動に対して繰り返し声を上げてきた」と、国防総省のジョナサン・ホフマン報道官は言う。「米軍はイラク政府の招きに応じて活動しており、現地のあらゆる法律と指示に従う」
ミラーによれば、現在の状況を非常に危険にしているのは、イスラエルの作戦がアメリカの支配する空域で行われたことだ。「国防総省があれだけ慌てた理由は明らかだ。親イラン派民兵の反撃の矛先が駐イラク米軍に向かうことを恐れている」
それでもネタニヤフは、再選のために危険を顧みずにさらなる攻撃を仕掛けるのか。
「ネタニヤフは総選挙までに安全保障に関わる事件があれば、最終的に自分が有利になると考えているようだ」と、中東ニュースサイトのコラムニスト、マザル・ムアレムは言う。「だから、イスラエルを戦争に巻き込むような行動を取りかねない」
危険なゲームに、しばらく終わりは見えそうにない。
<本誌2019年9月17日号掲載>
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※9月17日号(9月10日発売)は、「顔認証の最前線」特集。生活を安全で便利にする新ツールか、独裁政権の道具か――。日常生活からビジネス、安全保障まで、日本人が知らない顔認証技術のメリットとリスクを徹底レポート。顔認証の最先端を行く中国の語られざる側面も明かす。
ジョナサン・ブローダー(外交・安全保障担当)
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