安倍改造内閣、政策の要点はただ一点「第3の矢の実行」 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2019年9月12日 16時15分
<改造内閣にとって最優先課題が経済という論調は良いが、その焦点は日米貿易交渉や消費税増税対策ではない>
安倍政権の改造内閣のメンバーが発表されました。その改造内閣の発足とともに、最優先課題は経済だという論調がメディアで見られるのは良いことだと思います。そうした論調の多くが、消費税アップの問題と日米通商交渉の問題を取り上げているのですが、これについてはあまり褒められた指摘ではないと思います。
まず日米通商交渉については、現在の日本経済にとってGDPに大きな影響を与える自動車部品への追加関税は見送られており、今後の具体的な詰めに関しては大きな懸念は残っていません。問題はすでに峠を越えていると考えるべきです。
次に消費税の問題ですが、確かに消費税率アップによって、過大な駆け込み需要と、その反動での消費低迷を起こしては大変なことになります。前回の2014年4月の5%から8%への税率アップの際には、駆け込みの反動による6カ月以上の消費落ち込みがGDPの足を引っ張りました。
ですが、今回は違います。前回起きた「駆け込み需要」が弱々しいからです。一部の高額な家電やアパレルなど、富裕層向けの商品には動きがありますが、それ以外では、「最も高い買い物」であるはずのマンションの動きが鈍いなど、消費のセンチメントが相当に弱っています。そんな中で、
「税率アップによる実質値上げに備えて、今から節約をして生活を防衛する」
という消費者の姿勢が顕著になってきています。その原因としては、賃金が上がらないとか、労働者の相当な部分が非正規労働になっているという指摘があります。ですが、これも原因ではありません。企業に強制的に賃金を上げさせたり、非正規労働者を正社員として採用させたりして問題が解決するわけではないからです。
日本が現時点で置かれている経済面での問題は、
「一人当たりのGDPが伸びなくなり、従って日本が先進国から転落しつつある」
このことに尽きると思います。ですが、この指摘も原因ではなく結果です。ではその原因は何かというと、
「最先端の高付加価値経済が衰退し、流出している」
この一点に尽きます。これが現在の日本経済の問題であり、そこに政策を集中すべきと思います。
具体的には、
▼自動車やエレクトロニクスなど多国籍企業が、生産拠点だけでなく、研究開発やデザイン開発の拠点まで日本国内から海外に移転し、これに伴って海外での収益を海外での再投資に回している。このトレンドを反転させなくてはならない。
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