選挙公約にパレスチナ人の土地併合を掲げるネタニヤフ
ニューズウィーク日本版 / 2019年9月12日 18時40分
<参考記事>ゴラン高原の主権をイスラエルに認めると何が問題なのか
今回の演説を前にネタニヤフ陣営は、首相から「重大発表」をすると告知し、さまざまな憶測が流れるに任せていた。中道・左派の野党勢力は、選挙違反だとして演説を差し止めるよう選挙管理委員会に訴えたが、委員会は却下した。
これに先立つ9日には、イスラエル最大の敵イランの核施設の画像を公開。これに対しても、中道連合「青と白」のベニー・ガンツ元陸軍参謀総長は、慎重に扱うべき軍事情報を票集めに利用したと厳しく批判した。
4月の総選挙では、ネタニヤフ率いる右派勢力が過半数議席を獲得したものの、右派勢力内の世俗政党と宗教政党の対立が埋まらず、連立交渉は決裂し、5カ月後に再選挙が行われることになった。今回の再選挙も接戦が予想され、右派連合を率いるリクード党と「青と白」が手を組む「大連立」の可能性まで取り沙汰されている。ネタニヤフは今年7月時点で首相在任期間がイスラエル史上最長に達したが、かねてからくすぶっている汚職容疑で訴追されれば、辞任を求める声が高まるのは避けられない。
政治生命を保つには、首相の座にとどまり、免責特権の法案を通すなど訴追回避の方策を探るしかない。苦境に追い込まれたネタニヤフは、最近ではトランプ大統領だけでなく、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との親密さもアピール。選挙直前にもプーチンと会談を行う予定だ。ネタニヤフはパレスチナ国家の建設を条件付きで容認すると述べたこともあるが、極右に配慮して現在は否定している。
トランプ大統領は今年3月、イスラエルが第3次中東戦争でシリアから奪い、占領を続けているゴラン高原について、イスラエルの主権を承認する宣言書に署名した。
「占領地は併合できないと誰もが言うが、これで併合できることが証明された」と、ネタニヤフはこの時の記者会見で誇らしげに語った。「防衛戦争で占領した地域は、わが国の領土だ」
占領地の併合は、国連安全保障理事会の決議に反するばかりか、2国家共存を目指すオスロ合意の理念を無効にする暴挙だ。ネタニヤフが8月末にヨルダン川西岸の一部地域の併合について、米政府の承認を求めると発表したとき、パレスチナ自治政府のナビル・アブー・ルダイネ報道官は、併合は「受け入れがたい既成事実を積み重ねる動き」であり、「和平にも、安全保障にも、安定にも寄与しない」と強く抗議した。
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パレスチナの主要都市エリコの位置
ニコール・ストーン・グッドカインド
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