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社会状況が悪くなっていると思い込む「ネガティブ本能」が危険な理由

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月18日 16時0分

怖いのは、こうしてゆがめられた世論に押されて政策が決定されることだ。とりわけ教育の分野では、それが起きる危険性が高い。2015年に義務教育で道徳を教科にしたことなどは、その最たる例ではないか。

学者や評論家の仕事は基本的には問題提起にあるので、「今の社会は悪い」「ここが問題だ」と言う。「今のままでよい、何もしなくていい」とは言わない(言えない)。しかし『ファクトフルネス』が指摘するように、「悪い」と「良くなっている」は両立する。前者は今の状態で、後者は過去と比較した変化だ。この両者を見据え、ゆがんだネガティブ本能が暴走するのを抑えなければならない。

被害者予備軍のガードも必要だが、凶行を生まない環境づくりも大事だ。メンタルケアや福祉の充実はその中核に位置する。増加傾向にある子どもの自殺と同時に、極刑を恐れない「無敵の人」をなくすことにもつながるだろう。

20代が就職氷河期と重なった「ロスジェネ」には、「無敵の人」の予備軍が多いと見られているかもしれない。だが、ネガティブ本能が社会に広がると、この世代は救済対象ではなく、排除すべき異端の存在と見られやすくなる。事実(fact)を冷静に捉えることが必要だ。

<資料:厚労省『人口動態統計』>








舞田敏彦(教育社会学者)


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