韓国・文在寅大統領が最低を更新した、もう1つの支持率

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月20日 12時0分

<文が掲げる検察改革の旗手をめぐり世論が政権に見せつけた現実とは>

韓国のリアルメーター社が発表した最新の世論調査結果によれば、韓国の文在寅大統領の支持率は43.8%となり、就任後の最低記録を更新した。一方の不支持率も53.0%と2週連続で拡大するなど、文政権に対する否定的な世論が拡大していることが明らかになった。

文の支持率が最低を更新した一方で、もう1つ最低を更新した支持率がある。チョ・グク氏の法務部長官の起用に対する支持率だ。

リアルメーター社が7月から発表したチョの指名に対する世論調査を調べると、最新の調査結果では支持率が35.3%と過去最低を更新した。チョの指名に対する世論の動向を振り返ると、チョの指名にこだわり続けてきた文の目論見の甘さも露呈した。

法務部長官の起用が検討されているとの報道が出始めた頃にリアルメーター社が発表した世論調査(7月1日)によると、当初はわずかながら賛成(46.4%)が反対(45.4%)を上回っていた。

その後、文が法務部長官を含め閣僚級10人の指名を行った8月9日の後に発表された調査結果では、野党からの不満があったものの過半数近い支持(49.1%)を得ていた。

評価に暗雲が立ち込め始めたのが8月下旬。娘の大学および大学院への不正入学疑惑が取りざたされたことを受けてチョが謝罪に追い込まれた時だ。野党だけでなく、真相究明を求める大学生らによる活動が活発し始めており、チョの指名に対しては強烈な逆風が吹き始めていた。その影響も受けて指名に対する支持率も39.2%に急落。わずか2週間で10ポイント近くの支持を失った一方、指名反対率(54.5%)が過半数を超えた。

さらに国会における人事聴聞会(公聴会)をめぐり最大野党の自由韓国党が会をボイコットする姿勢を見せるなど強硬に指名反対を主張。「チョ長官」の実現は事実上困難との雰囲気も生まれつつあったが、チョはここで一度挽回する。

きっかけは無制限の質問を受け付けた11時間にも及んだ記者会見だ。知らぬ存ぜぬを繰り返すなど真相究明には程遠い内容だったが、「耐久レース」を乗りきった姿勢が評価されたのか支持率(42.3%)が一時回復した。

指名責任を問われかねなかった文もチョの記者会見に対する世間の反応を受けて好感触を得たのか、9月9日に任命に踏み切った。その翌日に発表された世論調査では支持率が46.6%と記者会見後のそれをも上回った。さらに不支持率(49.6%)も1カ月ぶりに過半数を割り込むなど、逆風は止んだかに見えた。



チョ長官の起用・指名及び任命に対する世論の動向

*7月1日はチョ氏の起用検討、8月14日~9月2日は指名、9月10日及び19日は任命に対する支持率(%)、**出所:REALMETER社(韓国)各種資料よりニューズウィーク日本版編集部作成


ところが任命前後からチョの親族に対するスキャンダルに進展があると、チョの任命に対する支持率がにわかにぐらつきはじめた。9月6日に妻が私文書偽造で在宅起訴されると、16日には娘がソウル中央地検から任意で事情聴取を受けた。さらに同日にはチョの一族が出資するファンドを経営する親族が横領と背任容疑で逮捕された。

こうしたスキャンダルを受けて実施された世論調査で、どうやら市民らはチョの任命に対して本格的なNOを突き付けたようだ。任命に対する支持率35.3%と「最低」を更新、不支持率も「過去最大」の55.5%に達した。

自身の支持率でも過去最低を記録した文にとってはダブルパンチとなる結果だ。それでも文が野望の1つに掲げる検察改革が達成できれば名誉の負傷といえるかもしれない。文は歴代の革新政権に対して抵抗を続けてきた「検察の民主化」を実現しようと躍起で、チョの任命はその重要な一歩だった。

実はチョの指名をめぐる動きの中でも、文政権と検察の間で激しいせめぎ合いが起きていた。チョの指名をめぐって発覚した親族らの疑惑についての検察の捜査に、政権内部と一部世論から行き過ぎた捜査ではないかとの懸念が示されていた。チョの指名支持から検察の捜査姿勢に争点を切り替える動きに見えなくもなかったが、文にしてみれば検察の横暴ぶりを世論に訴えて支持回復を狙ったのかもしれない。

しかし文政権はここでも「敗北」していた。リアルメーター社は9月初旬に「チョ・グク法務部長官候補者の検察捜査に対する国民世論」調査を発表。検察の捜査はやり過ぎなのか、それとも妥当かを問う内容だった。

結果は、「原則に則った適切な捜査」が52.4%と、「検察改革を防ぐための(検察による)組織的抵抗」の39.5%を大きく上回った。さらに9月11日に発表された別の世論調査結果では、「チョ・グク氏の検察改革は成功するか失敗するか」の問いに対して「失敗する」が46.6%、「成功する」が45.0%となった。政権としては「拮抗している」と前向きに捉えたい結果かもしれないが、チョの指名に対する支持がこれまで一度も過半数を超えていないことと併せて厳しい現実を突きつけられているというのが実態かもしれない。

検察改革を掲げる文の試練は始まったばかりだが、少なくとも出鼻は大きくくじかれているようだ。


ニューズウィーク日本版編集部

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