「盤石」の安倍外交、8年目の課題は「韓国」だ
ニューズウィーク日本版 / 2019年9月25日 16時5分
朝鮮半島は鬼門だ。元徴用工の訴訟や秘密情報保護協定(GSOMIA)問題での韓国の強硬姿勢は想定外だったろう。残念ながら、北朝鮮との拉致問題も解決の糸口を見いだせないでいる。南北朝鮮については、冒頭に述べた外交の国際的側面と国内政治的側面のバランスの維持が非常に難しい。
日米韓の連携が失われる?
さらに困難なのが、東アジアでのいわゆる歴史問題の扱いだ。安倍外交の基本姿勢は確かなものだが、国際的利益と国内的政治配慮のどちらを優先するかは微妙である。13年の靖国参拝では後者を優先し、15年の戦後70年談話では前者を優先している。
最後にロシアに触れよう。北方領土をめぐる日ロ首脳交渉は、日本国内への配慮というより、米中ロ間のバランス変化を踏まえた戦略的な一手である。残念ながら今回ロシアは米ロ関係の悪化を受け、中国の戦略的脅威よりもアメリカに対する中ロ連携を重視した。日ロ関係の再活性化は容易ではない。
過去7年弱の安倍外交は、不確実性が高まる東アジアで日本の国益と存在感を高めることにおおむね成功してきた。懸念材料は、日韓関係悪化に伴い従来の日米韓3国の連携が失われる可能性だ。今後日本がアメリカと共に韓国をどこまで引き留めるのか。これが安倍外交8年目の課題である。
<本誌2019年10月1日号掲載>
※10月1日号(9月25日発売)は、「2020 サバイバル日本戦略」特集。トランプ、プーチン、習近平、文在寅、金正恩......。世界は悪意と謀略だらけ。「カモネギ」日本が、仁義なき国際社会を生き抜くために知っておくべき7つのトリセツを提案する国際情勢特集です。河東哲夫(外交アナリスト)、シーラ・スミス(米外交問題評議会・日本研究員)、阿南友亮(東北大学法学研究科教授)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)らが寄稿。
宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、元外交官)
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