台湾は民主を守れるか――カギを握るのは若者
ニューズウィーク日本版 / 2019年9月27日 10時47分
問題は実際の投票行動だ。若者はネットではすぐに意思表示するが、果たして投票場まで行くかというと、必ずしもそういうわけではない。
郭台銘を不出馬に追い込んだ嫌中ムード
しかし、台湾経済を復興させてくれるのではないかと期待が集まった郭台銘は、あまりに習近平に近すぎることから、不出馬にまで追い込まれている。彼が最初に総統選出馬の意思を表明した4月では、世界の注目が集まり、大きな変化が起きるのではないかと少なからぬ者が期待した。
ただ今年元旦に習近平が「台湾同胞に告ぐ」講和の中で、「92コンセンサス」から一歩踏み込んで台湾にも「一国二制度」を実行すると表明したことから、台湾の大陸に対する警戒と批判が高まっていた。そのような中で国民党に入党した郭台銘は北京に近すぎることから支持率が上がらず、5月1日には訪米してトランプ大統領に会っている。中華民国の国旗のワッペンを帽子に縫い付けたりなどのパフォーマンスを見せたが、支持率は上がっていない(トランプとの会談に関しては5月5日付コラム「トランプ大統領と会談した郭台銘・次期台湾総統候補の狙い」に書いた)。
結果、7月15日の党内予備選で韓国諭に敗れ、9月12日に国民党を離党した。
そんなことくらいでは人気の回復ができないほど、庶民の心は大陸(北京政府)から離れている。
香港デモを見て、非常な危機を感じているのだ。
習近平の「台湾同胞に告ぐ」講和は、裏目に出たのではないだろうか。
逃亡犯条例改正案を水面下で香港政府に勧めた狙いも裏目に出ている。
となれば、香港の若者だけでなく、台湾の若者もここで奮起するかもしれない。その志に期待したい。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
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