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なぜ韓国の若者は失業に苦しみ続けるのか

ニューズウィーク日本版 / 2019年10月7日 11時30分



私としては、自治体による奨学金返済の支援を検討すべきだと考えている。韓国では奨学金を借りて大学を卒業した学生が就職後に返済に苦しむケースが見られている。

そうした問題を改善するために、中小・中堅企業に一定期間就業した場合、そして同一地域に居住する場合はその自治体が奨学金の返済を支援する制度があれば、中小・中堅企業に就職する若者が増えるのではないかと考える。

課題としては、自治体の財政負担が増えることと長期的に運営できるかどうか、だ。

――企業としてできることは?
光州型雇用モデルの全国展開が検討できると考えている。これは、(韓国南西部の)光州市と現代自動車による合弁企業(合作法人)のことで、雇用を確保したい自治体とコストを抑えたいメーカーの希望をかなえるモデルだ。

人件費が上昇するなか大手製造業は安い労賃を求めて国外移転を行うことで産業の空洞化の問題が発生する。また、地方においても雇用改善は至急課題となっている。

これらを解決するために、自治体が企業と協同し、他地域よりも適正範囲内で低い賃金を設けて工場誘致をはかり、雇用創出を実現するのがねらいである。

ただ、これは進歩系といわれる左派系の勢力の間でも賛否両論がある。地域住民にとっては新工場設立による雇用創出というメリットが得られるが、他地域の既存の工場で働く労働組合員にとっては賃上げ抑制の要因になるからだ。

特に強硬派で知られる民主労総は光州モデルに強く反発している。他方、左派系のハンギョレ新聞や京郷新聞は普段は賃金抑制に批判的な記事を書く傾向が見られるが、光州モデルに対しては支持的な論調である。

課題の一つは、賃金水準である。企業誘致に向けた低めの賃金設定はやむを得ないが、ワーキングプアの創出ではなく地域住民の生活水準の向上につながるような配慮が必要である。

また、労組側にも歩み寄りや視点の転換が必要だ。これらの課題が解決できれば、光州以外のエリアにも展開できる。

――企業の採用にも課題がある。
採用慣行を改善させる必要はある。現在の採用プロセスでは、書類選考に大学ランクなど学歴が強く反映されるケースが多い。

公共部門では2017年から学閥、学力、出身地、身体条件などを履歴書に記載しない「ブラインド採用」が義務化されている。総合大学のトップ3といわれるソウル大学・延世大学・高麗大学からの採用が減るなど一定の効果が見られていることから、この採用方式を民間にも広げる努力が必要になるだろう。

雇用の創出そのものは難しいとしても、採用方法をもっと公平にすることで若者の不満を軽減することは必要な措置だろう。




前川祐補(本誌記者)


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