梅棹忠夫と下河辺淳とともに「遊びのある地域文化」を探し出した...サントリー地域文化賞選考委員座談会(上)
ニューズウィーク日本版 / 2023年9月20日 10時40分
「遊びのある地域文化を見つける」という発想が一貫していて、真面目くさった推薦書なんかが出てきたら、「面白くないね。遊びがない」とはじいていかれた。
藤森 サントリー学芸賞は知っていたから、「地域文化賞」の委員を断ることはなかったわけだけれど、決め手は梅棹さんですね。高校時代から著作を読んでいて、僕にとって伝説の人。
ある種の行動する文化人ですよね。会えるのが楽しみでした。京都の西陣の出だと思っていたら、先祖は滋賀県の出で、滋賀に愛着を持っているのが意外であり、面白かったです。戦後の京大系の、戦前から続く知性という感じはしましたね。
御厨 佐々木さんは、選考委員になる前に、財団の「地域は舞台」というフォーラムにお出になっていましたが、委員になってみていかがでしたか。
佐々木 もう毎回、面白くてたまらなかったですね。選考委員が現地に行って調査するようになってからは余計に。結果的にその地域が受賞しないことになっても、そこにいる人たちと出会うことそのものがとても面白かった。
また、僕は梅棹先生にこの選考委員会で会うことを目指して、梅棹全集を初期から全部読みました。モンゴルへ行ったときの研究とか、大興安嶺の調査旅行の作品とか。
そして、具体的な話を直接いろいろ聞きました。トランス・ヒマラヤを発見したスヴェン・ヘディンが持っていたのと全く同じ測量器具を準備して、地図を作りながら歩いていったとか、そういう話も含めてとても面白かった。
そのとき論文の文体についても聞いてみたんです。梅棹さんの論文は、いわゆるしかめっ面らしい論文スタイルでなく、非常に読みやすい砕けた文体で書かれている。
「あんな文体でいいんですか」と聞いたら、「研究論文なんてどんな文体でもいい。面白けりゃいいんだ」と。同時に「地域文化は、しかし、研究ではないんだよ」とおっしゃったんです。僕は「ここだな、ここだな」というポイントを教えられたという思いです。
「日本ではどうして湿地帯にしか都市ができないのかね」
佐々木 下河辺先生は、かつては国土事務次官で、田中角栄の『日本列島改造論』の原型をつくった人ですよね。その大きな枠組みの発想に「へえ」と思うことはたくさんありました。
どこかのまちの地域文化が候補になると、そのまちの話とは関係なしに「しかし、日本ではどうして湿地帯にしか都市はできないのかね」と突然おっしゃる。
別のまちについて「持続可能か」ということが話題になれば、「道路をこういうふうに通せばいくらでも持続可能になる」と。一貫してボンと押さえてくるつかみ方が、強く印象に残っています。
この記事に関連するニュース
-
「銀河英雄伝説」のツイートをしただけなのに…“大炎上した大学教授”の後悔
文春オンライン / 2024年5月19日 17時0分
-
第30、31回鹿島美術財団 財団賞・優秀賞を決定
PR TIMES / 2024年5月15日 15時15分
-
大阪城のエレベーターは当時「復元」のあるべき姿とされていた!...名古屋城の「ホンモノ」を問い直す
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月15日 11時5分
-
キャリアオーナーシップ経営 AWARD 2024 グランプリと4部門の最優秀賞 企業が決定
PR TIMES / 2024年5月13日 17時45分
-
松岡正剛のイシス編集学校、新たなアドバイザリーボード「ISIS co-mission」を発足
PR TIMES / 2024年4月26日 16時15分
ランキング
-
1親イラン勢力幹部ら会合=ライシ師弔問、「反イスラエル」確認
時事通信 / 2024年5月23日 20時24分
-
2ニューカレドニア暴動で足止め 日本人の新婚夫婦「先が見えない」「経済面が結構大変」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月23日 23時14分
-
3韓国、「スパイ」在日男性に無罪 再審で高裁、冤罪50年
共同通信 / 2024年5月23日 18時10分
-
4サルが木から落ちて死んでいく…異常な猛暑で悲劇「孤児になった子ザルも多い」絶滅危惧種が危機 メキシコ
よろず~ニュース / 2024年5月24日 7時30分
-
5「中国海軍だ」…中国“海洋進出”の現場は 巨大巡視船でフィリピン漁船を妨害 南シナ海でも対立激化
日テレNEWS NNN / 2024年5月23日 22時34分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください