UAWがビッグスリーに求める週4日制に理はあるか
ニューズウィーク日本版 / 2023年9月19日 16時47分
<ビッグスリー揃い踏みという史上初のストライキに突入した全米自動車労組(UAW)は大幅賃上げを要求しているだけではない。子供を育て、人生を楽しみ、親を看取ることができる「普通の生活」だ>
全米自動車労組(UAW)が、米国の三大大自動車メーカー、いわゆる「ビッグスリー」に対して実施している歴史的なストライキは、すでに4日目に突入している。UAWの主な要求のひとつが、UAW幹部が言う「ワークライフバランスの向上」を達成するための、週4日労働の実現だ。
フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)、ステランティス(傘下にクライスラーがある)で働くおよそ1万3000人の労働者はストライキに入っている。3社の従業員が一斉にストライキを起こすのは史上初のことだ。労働者側は、賃上げ、物価上昇に応じた生活費手当の支給、そして公平な利益分配制度などを要求している。
UAWは同時に、ワークライフバランス向上のための週32時間労働を、週40時間労働のときと同じ賃金で実現させようとしている。
新しい休日を恩に着せる企業
週4日労働をめぐる議論はここ数年、世界中で盛り上がっている。労働者たちがより柔軟な働き方を求めるようになったためだ。
アメリカでは、国際従業員給付制度財団(IFEBP)の調査対象になった企業のおよそ20%が、週4日労働について、検討しているか制度化したと回答した。新型コロナウイルス感染症の流行のさなかに従業員が様々な労働形態を経験したこともこの動きを後押しをしてしたという。
IFEBPのコンテンツ担当バイスプレジデントを務めるジュリー・スティッチは、「パンデミック後、一部の雇用主は、新規採用の促進や従業員の定着率向上などの必要から、週4日労働を導入しつつある」と話す。「しかしほとんどの雇用主は、ビジネス上の目標達成と週4日労働を両立する方法を見つけ出せずにいる」
週労働時間を短縮すると生産性を損なわずにストレスを軽減できる、という研究結果もある一方で、企業はなかなかそれを導入できない。
週4日労働に関するニュージーランドのある研究では、従業員は休日が1日増えるのを評価しており、それが健康・幸福に貢献していると話す人もいた。しかし、その増えた休日は、経営側からは贈りものと見なされ、残った4日間でのプレッシャーが大きくなったという。
「ある企業幹部は、従業員が「100%の仕事を80%の時間に押しこもうとした」結果として、「一部の仕事の質が低下した」と受け止めていた」
UAW委員長からのメッセージ
一斉ストを率いるUAWのショーン・フェイン委員長は、労働者の仕事と家庭生活に関して、もっとバランスのとれたアプローチを実現したいと考えている。「われわれは、世界屈指の過重労働集団だ」とフェインは言う。「家族を支えられるだけの賃金を誰もが稼ぎ、生活を楽しみ、子どもたちが成長し、両親が老いていくのを見守るだけの余暇を得られる社会というビジョンのために、われわれは闘わなければならない」
オマル・モハメド
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