ロシアの裏庭でアゼルバイジャンが「対テロ戦争」を開始、孤立したアルメニア人住民に民族浄化の危機
ニューズウィーク日本版 / 2023年9月20日 18時15分
ロシアは2020年の紛争では停戦を仲介する役割を果たしたが、アゼルバイジャンの今回の攻撃は数分前に知らされただけだったと、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は語った。そして紛争当事者に既存の和平合意を尊重するよう促しただけだった。
ナゴルノカラバフ在住のジャーナリスト、マルト・バニャンは19日、ナゴルノカラバフの中心都市であるステパナケルトの病院付近から爆発の音が聞こえ、煙が上がる様子をXに投稿した。「砲弾の音がひっきりなしに聞こえている」と彼は書いた。夜には自分の家のすぐ近くで砲弾や銃弾が炸裂。バニャンはその恐ろしい動画も投稿している。
BBCによると、街では防空サイレンと迫撃砲の音が鳴り響き、地雷の爆発などでアゼルバイジャン人警察官と民間人11人が死亡した。
ロシアの平和維持軍の管理下にある地域でも爆発事件が2件発生し、軍人4人と民間人2人が死亡した。アゼルバイジャン政府はアルメニアの破壊工作グループの仕業だと非難した。
「アゼルバイジャンは、2020年のナゴルノカラバフ紛争を終結させた停戦合意に従ってロシアの平和維持軍が守っている地域も支配下に入れようとしているようだ」と、ICGのバルタニャンは述べた。「今回の戦闘で、この地域に住むアルメニア人は逃げ出すかもしれない」。
大国間の緊張を生む
その後2022年にも衝突はあったが、2023年1月に作成されたICGの報告書によれば、外交努力によって戦争に発展せずに済んだ。
だがICGは「衝突が再燃するリスクは依然として高い」とし、両国間の戦いは「多大な人的犠牲を伴う」だけでなく、「EU、ロシア、アメリカの地域的緊張を高める」戦争になると警告している。
ICG南コーカサス・アナリストのザウル・シリエフによると、アゼルバイジャンは、アルメニアとの30年に渡る対立に関する不満が、これまでの和平プロセスでは十分に解決されていないと感じている。最近の会談でも同様の苦情を申し立てていた。
「アゼルバイジャンは2020年の衝突で地図を塗り替え、現在はアルメニアとの和平解決を模索しているが、あくまでも自国に都合のいい条件を求めている」と彼は本誌に語った。
シリエフによれば、アゼルバイジャン政府はNATOの同盟国であるトルコなどの外部からの圧力にも関わらず、その姿勢を変えるつもりはなさそうだ。
「アメリカ、EU、ロシアは停戦交渉を仲介したにもかかわらず、たいした影響力を持っていないようだ」と、シリエフは言う。
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