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ロシアに裏切られたもう一つの旧ソ連国アルメニア、アゼルバイジャンに「降伏」で涙呑む

ニューズウィーク日本版 / 2023年9月21日 18時7分

ロシアはアルメニアとの絆を強調

デモ隊はアルメニアのニコル・パシニャン首相の退陣も要求。首都中心部の官庁ビルを包囲し、治安警察と衝突した。

ロシア大使館のアレクサンドル・グチコフ報道官は、ロシア政府のプロパガンダを流すテレビ番組『ソロビヨフ・ライブ』の取材に応じ、状況は「緊迫」しているが、デモ隊が大使館に直接的な攻撃を加えるようなことはない、と述べた。

「ロシアとアルメニアの人々は何世紀もの歴史と多方面に及ぶ太い交流ネットワークで結ばれている。たった一晩であっけなく壊れるような関係ではない」──地元メディアはグチコフの発言をこう伝えた。

アゼルバイジャン軍は、ナゴルノカラバフで地雷が爆発し、兵士4人と民間人2人が死亡したとの報告を受けて「対テロ作戦」を開始、ナゴルノカラバフのアルメニア人「分離主義者」たちの軍事施設を攻撃した、と主張した。

直後に、ドローン(無人機)やミサイルの攻撃を受けるナゴルノカラバフの様子を捉えた動画がソーシャルメディア上に出回った。アルメニア側が「アルツァフ共和国」の首都と称する、ナゴルノカラバフの主要都市ステパナケルトでは、空襲警報に続いて、砲撃音が鳴り響き、多数の死傷者が出た。

アメリカ、ロシア、EUはじめ国際社会は即座にアゼルバイジャンに作戦中止を呼びかけた。アントニー・ブリンケン米国務長官はアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領と電話で協議し、「アゼルバイジャンに対し、ナゴルノカラバフにおける軍事行動の即時停止と事態の沈静化を促した」と米国務省が発表した。

ロシア外務省は、「われわれは紛争の両当事者に対し、今すぐ流血の惨事を止め、交戦行為を停止し、民間人の犠牲をなくすよう求めた」と述べた。

今回の攻撃は、ナゴルノカラバフ紛争がさらに激烈な新局面に突入する引き金となりかねない。2020年に起きた衝突はアゼルバイジャン側の勝利で終わった。1990年代に両国が旧ソ連から独立して以来、2度目の大規模な戦闘だった。

2020年の停戦協定で、ロシアの平和維持部隊はアルメニアとナゴルノカラバフを結ぶ唯一の幹線道路であるラチン回廊道沿いに展開することになったが、ロシア軍はこの道路を守りきれなかった。アゼルバイジャン軍は昨年12月この道路を封鎖。ナゴルノカラバフに住むアルメニア人は外界から孤立し、食料や医薬品不足にあえぐことになった。

ロシアは長年にわたりアルメニアを影響下に置き、それを足がかりとして、広く南カフカス地域全体を勢力圏に組み込もうとしてきた。そのためアルメニアに軍事基地を置き、CSTOの同盟国として軍事支援を行ってきた。ロシアはアルメニアの最大の武器供与国だ。

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