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日本の「需給ギャップ」がプラスに...なぜこれが重要なのか? もう大規模緩和はやめるべきなのか?

ニューズウィーク日本版 / 2023年9月27日 17時55分

PIXELVARIO/SHUTTERSTOCK

<日銀の緩和策や政府の景気対策の有力な根拠の1つは「需給ギャップのマイナス」だったが、これが3年9カ月ぶりにプラスになった>

内閣府が、日本経済の需要と供給の差を示す需給ギャップが3年9カ月ぶりにプラスになったと発表した。需給ギャップがプラスになったということは、需要に対して供給が足りないということであり、日本経済が人手不足やコスト増加によって供給制限に陥った可能性が推察される。

この状況は長期にわたって継続するとの見方もあり、もしそれが事実なら、日本はいよいよ本格的なインフレ時代に突入したことになる。

日本経済の需給ギャップは、これまで長期にわたってマイナスが続いており、日銀が大規模緩和策を継続したり、政府が大型の景気対策を実施する有力な根拠の1つとなってきた。しかしながら需給ギャップというのは、あくまで推計値であり、各期の結果だけを根拠に金融政策や財政政策を決めるのは適切とはいえない。

その意味で、今回、需給ギャップがプラスになったことだけを取り上げて、これまでの経済対策の有効性に疑問を呈するのは行きすぎだろう。一方で、大規模緩和策や財政出動を推進する立場の論者は、需給ギャップがマイナスであることをことさらに強調し、政策推進の根拠にしてきた面があることは否定できず、経済政策に関する議論に一石を投じるのは間違いない。

需給ギャップについて理解しておくべきこと

需給ギャップは、実際に計測されるGDPの数字から、理論的に得られる「潜在的なGDP」の数字を差し引いて求められる。潜在的なGDPについては直接観察することはできず、生産関数を用いて推定することになるが、変数である労働量や資本、企業の生産性については、一定の仮定条件を置く必要がある。

このため、条件次第で数字が大きく変わってしまうリスクがあり、需給ギャップについて議論する際には、この辺りを十分に理解しておかなければならない。

加えて言うと、生産関数による推計は長期的な経済の供給力の推移を見るものであり、一方で、実際に計測されるGDPは短期的な需要の推移に基づいており、両者の次元は異なる。従って、需給ギャップを単純に埋めるような考え方は適切とはいえず、逆に需給ギャップがプラスになったからといって、即座に金融を引き締めるといった議論も少々荒削りといえる。

日銀の政策転換が必要な時期は近いうちに来る

需給ギャップはあくまでトレンドを見ることが重要であり、その意味では長くマイナス圏で推移してきた数字がプラス転換したことにはそれなりに意味がある。

日本経済が本格的なインフレ体質にシフトしたのだとすると、需給ギャップは今後もプラス傾向が続く可能性が高い。

インフレというのは多くの人が認識した段階では、既に相当程度、状況が悪化していることがほとんどであり、中央銀行は早めに行動に移すことが求められる。政府も供給制限の元凶の1つとなっている人手不足を解消すべく、デジタル化や企業の経営効率改善など、各種産業政策を強化すべきだろう。

筆者は今すぐに日銀が政策転換を行うことは現実的ではないと考えているが、近い将来、政策転換が必要な時期は必ずやって来る。このところ為替市場では円安が進んでおり、需給ギャップのプラス転換は、今後の物価高を連想させる。場合によっては円がさらに減価し、供給不足との連鎖が始まる可能性も否定できず、時代は変わりつつあるとの認識が必要だ。



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