1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

新作ゲーム『スターフィールド』が開く新たなクラシックの世界...サウンドトラックの「スケール感は前代未聞」と評判

ニューズウィーク日本版 / 2023年9月29日 13時10分

ゲーム『スターフィールド』のサウンドトラックを、ロンドン交響楽団は組曲として演奏した TRISTAN FEWINGS/GETTY IMAGES FOR THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA

ピコピコ音の時代は遠く

ゲーム音楽の作曲家で指揮者でもあるエイマー・ヌーンは2021年のインタビューで、「現代ではゲーム機で交響曲を聴いている若者の数は、過去に生演奏の交響曲を聴いたことのある人の総数よりも多いだろう」と語っている。

彼女はおそらく正しい。世界中のゲーマーの数は30億人以上。しかも18~25歳の人々は一日の多くをゲームに費やしている。英ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団が18年に実施した世論調査では、生演奏よりもゲームを通じてクラシック音楽に触れる若者のほうが多かった。

高度な技術と作曲家の研鑽により、今では古代ギリシャにタイムスリップできるタイムマシンのような楽曲も生み出し、その時代にふさわしい音を再現できるようになった。

例えばフロム・ソフトウェアの『セキロ:シャドウズ・ダイ・トゥワイス』では、日本の作曲家の北村友香が伝統楽器を駆使して戦国時代のサウンドを作り上げている。

今の人気ゲームの多くは、クラシック音楽の要素をサウンドに取り入れている。だからボストン・グローブ紙の音楽ライターであるA・Z・マドンナのように、「ゲームのおかげで私はクラシック音楽に恋をした」と言う人もいる。

ゲームの進化につれてゲーム音楽も進化する。生演奏用の曲よりも映画用の曲よりも複雑になり、インタラクティブになり、より重層的になっている。しかも、ゲーム産業の拡大は今後も続く。その市場規模は27年段階で5330億ドルと予想されている。そして新たなゲームが発売されるたびに、ゲーム音楽のストリーミング配信も始まる。

伝統的なクラシックの音楽界も、ようやくこうした変化に気付き始めた。昨年にはイギリスで、夏のクラシック音楽の祭典「BBCプロムス」で史上初めて、ゲーム音楽が演奏された。今年はアメリカのグラミー賞に初めて「最優秀ビデオゲーム・インタラクティブメディア作品スコア・サウンドトラック」部門が設けられた。一流オーケストラがゲーム音楽を生で聴かせるコンサートも、今はたびたび開かれている。

『スターフィールド』の映像は美しく、その世界は実にクリエーティブで、ストーリーも奥が深い。だが、その全てをまとめているのは圧倒的なサウンドスケープだ。

あの「ピコピコ音」の時代に比べたら、思えば遠くまで来たものだ。今のゲーム音楽は交響曲として構成され、ゲーム空間の長い旅路を満たしている。そして『スターフィールド』同様、その音は宇宙の果てまでも響くのだ。

J. Aaron Hardwick, Orchestra Director and Assistant Professor of Music, Wake Forest University

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.



アーロン・ハードウィック(指揮者)


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください