メドベージェフが発した核より現実的で恐しい戦線拡大の脅し
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月2日 18時14分
NATOはこれまで、ロシアの侵攻に対抗してウクライナを支援しているだけであって、NATOとロシアは戦争状態にはないと主張してきた。だがロシアの意図的な攻撃によって戦争がNATO加盟国に波及すれば、加盟国に対する攻撃はNATO全体の攻撃とする北太平洋条約第5条が発動されて戦争がさらに拡大する恐れがある。
タウルス・ミサイルは、大まかにいえばフランスとイギリスがすでにウクライナに送っている英仏の長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ/SCALP」と同じものだ。これにより、ウクライナはロシア領内への攻撃がしやすくなり、ロシアの防空計画を困難にしている。
ストームシャドウは設計上、タウルスと非常によく似ているが、タウルスは「弾頭の設計改良で貫通力が増し、橋を狙って攻撃する場合により優れた兵器になるだろうと、ノルウェーのオスロ大学の博士課程研究員でミサイル技術の専門家ファビアン・ホフマンは8月上旬に本誌に語った。ウクライナは、併合されたクリミア半島とロシア、そしてウクライナ南部のロシア領を結ぶ橋を繰り返し攻撃している。
空中発射式のタウルスの射程は500キロを超え、ストームシャドウの250キロよりも長い。ウクライナは何度もタウルス・ミサイルを要求してきたが、ドイツは躊躇していた。アメリカも射程の長い地対地ミサイルATACMS(陸軍戦術ミサイル・システム)の提供を避けてきた。ジョー・バイデン大統領は最近、アメリカがATACMSを提供することをウクライナに示唆したとされているが、それ以上の詳細は確認されていない。
悩むドイツ
9月下旬、ウォールストリート・ジャーナルは、ドイツのオラフ・ショルツ首相はウクライナへのタウルス・ミサイル供与の承認を延期したと報じた。タウルス・ミサイルをウクライナに供与するためには、「複雑な兵器の修理点検と運用を支援するためにドイツの兵員をウクライナに派遣しなければならない」からだという。ショルツ首相の報道官は、ウクライナに近々タウラス・ミサイルを供与する計画はないと同紙に語った。
ドイツ連邦議会国防委員会のマリー=アグネス・シュトラク=ツィンマーマン委員長は先日、「ドイツは直ちにタウルスを引き渡すべきだ。タウルス・ミサイルを標的の攻撃に使用すれば、ウクライナ軍はロシアの補給線を本格的に妨害することができる」と述べた。
だがウォールストリート・ジャーナルによれば、ショルツは、ミサイルの提供によってドイツが現在進行中の戦争に深く巻き込まれ、ロシアとのより直接的な対決につながる可能性があることを懸念している。
<動画>地下まで貫通するタウルス・ミサイル
エリー・クック
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