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大谷翔平の活躍は効果大? MLB観客動員数が大幅増加...その本当の理由

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月10日 17時40分

だが大谷時代の今は野球に勢いがある。今年のMLB(米大リーグ)の観客動員数(7074万7365人。昨季から600万人以上も増加)は、前年比で1998年以来最も大幅に増加している(7000万人を超えたのは、2017年以来)。新たに導入されたピッチクロック(投球時間制限)や投手交代時の規則など、試合時間を短縮するためのルール改定が効果を上げたのだろう。実際、試合時間は平均で20分ほど短い。

もちろん、今でもアメリカで一番の人気スポーツはアメリカンフットボールで、約1億8840万人のファンがいる。だが野球にも1億7110万人のファンがいる。バスケットボールの1億5590万人よりも、アイスホッケーの1億3620万人よりも多い。大谷やトラウトのような選手がいるのだから、どんどんファンが増えるのは当然だ(この2人が同じチームにいたままリーグ優勝を狙える展開になれば、もっとファンは増えるだろう)。

私の感触では、アメリカの野球ファンは大谷のことが大好きだ。彼らはWBCでアメリカ代表チームが負けたことに失望などしていない。むしろ大谷が大活躍し、日本を優勝に導いたことに感動している。

もはや大谷は「神」になった

あのパフォーマンスと、あの劇的な結末。あれを見れば誰だって身震いする。まさに神業。あの3月21日の晩、彼は世界の、そして私の度肝を抜いた。その後の半年間、彼は全米各地の球場で投打の二刀流パフォーマンスを披露し、野球ファンを熱狂させた。先頃、ある大人の野球ファンに大谷についての感想を聞いたら、彼は即座にこう言った。「ああ、大谷は神様だ」と。

悲しいかな、神様とて不死身ではなかった。記録破りのシーズンも終盤に入った8月23日、大谷の体が悲鳴を上げた。右肘の内側側副靭帯に、またも異変が生じた。それでまた、シーズン前のWBCで無理をした選手は疲労の蓄積などで調子を崩し、あるいは故障しやすいという苦情が噴き出した。

とんでもない。データを見る限り、WBCでの奮闘でレギュラーシーズンに調子を落とし、あるいは負傷欠場に追い込まれた選手はいない。

大谷の場合は? WBCでは7試合に出場し、9イニングしか投げていない。これくらいは春のキャンプでも投げる。

WBCに出場した日本人選手でシーズン中に調子を落としたように見えるのは、わがボストン・レッドソックスの吉田正尚だけだ。WBCでは.409だった打率が徐々に落ちていった。しかし彼はMLBにデビューしたばかりの「新人」。対戦相手の投手が彼の癖に気付き、慣れてくれば、そう簡単に打たせてもらえない。これは新人選手の試練だ。

私の思うに、今やWBCは世界中のファンを沸かせる特別なスポーツイベントの1つになった。サッカーにとってのワールドカップ、アイスホッケーにとってのオリンピックに負けないくらい素敵なイベントになりつつある。間違いない。

大谷が投げ、トラウトのバットが空を切って試合は終わった。私はソファから立ち上がり、キッチンへ移動して外を見た。

まだ雪が降り続き、気温は氷点下まで下がっていた。外は暗いのに、まぶしかった。急に寒さが和らいだように思えた。靭帯の損傷は、まだ思いもよらない未来だった。

グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)


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