グローバルな「南」にも「北」にも「配慮」する南アフリカ...「新たな夜明け戦略」に突き付けられる難題とは?
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月11日 14時35分
そして、続く現在のラマポーザ政権は経済外交を重視する方向に舵を切り、そこに進歩的国際主義へのコミットメントが加わった。
国連改革、グローバルな公平性、グローバルノースの支配を終わらせることなど、進歩的国際主義に基づく南アフリカの主張は、時にグローバルノースから自分たちへの挑戦と見なされることがある。
ラマポーザのスタンスは、南アフリカの外交政策に難題を突き付ける。南アフリカはグローバルノースと強い経済的・政治的関係を維持しながら、グローバルサウスとの強い関係も継続している。後者にはキューバ、ベネズエラ、ロシアも含まれ、その点を西側から批判されている。
国際組織でリーダーシップを
南アフリカは「バランサー」「スポイラー」「善き国際市民」という役割を演じながら、グローバルな地位を追求してきた。
バランサーとしては、非同盟と独立の原則に従い、南北双方との関係を正当化しようとしている。
スポイラーとしては、例えば中国の人権問題は国内問題だとして非難しない。これは中国との南南協力の1つと考えることもできる。そして善良な国際市民としては、国際法の支配と国際規範の維持を支持している。
18年に大統領に就任したラマポーザは、当初は外交政策をあまり重視していなかった。しかし、19年12月に新型コロナの感染が拡大した頃には、アフリカのパンデミック対策を主導するようになった。
南アフリカは世界の勢力バランスの地政学的変化を利用しようとしている。露骨なリアルポリティーク(現実政治)の復活だ。
例えばこの1年に諸外国との合同軍事演習を実施しており、なかでも国連安全保障理事会の常任理事国であるフランスとの演習が注目されている。
南アフリカのソフトパワー外交は、国連機関や文化外交を通じて一定の成果を上げてきた。ただし、多国間組織でのリーダーシップを強化するといった実質的な利益には、必ずしもつながっていない。
さらに、ロシア、中国、インドなど非西側の軍事大国への傾倒は、西側の失望を招いた。連帯、独立、非同盟、進歩的国際主義という外交政策の柱は、外国直接投資の増加など、実質的な経済外交上の利益に結び付いていない。
中国やトルコ、ロシア、インドなどとの貿易は確かに伸びている。しかしラマポーザの掲げる、南アフリカの「新たな夜明け」というビジョンに沿ってインフラを更新し、新たな開発プロジェクトを始めるには、さらに大規模な投資が必要だ。
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