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2023年秋、AI業界勢力図① Nvidiaの独り勝ち

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月17日 16時20分

NvidiaのイメージBelow the Sky-Shutterstock

<AI新聞編集長の湯川鶴章氏が解説する、「2023年秋、AI業界勢力図」。第一弾は半導体大手Nvidiaに焦点を当てる>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

AIは大きくなるほど性能が向上する傾向にある。この傾向が理由で、AIの巨大化が今もなお続いている。そしてその結果としてAI業界のいろいろなレイヤーで激しい競争が繰り広げられ、業界勢力図の流動的な状態が続いている。どのレイヤーにどのようなプレイヤーがいて、勢力図はどう変化していっているのか。詳しく見ていくことにしよう。

AIの巨大化が勢力図の予測を困難に

AIは大きくなればなるほど、性能が向上する。実はこれは最初から分かっていたことではなく、AIモデルを大きくしてきた結果、明らかになってきた経験則である。少し専門的な表現を使うと、AIには「スケーリング則」と「創発的能力」があることが、後から分かってきた。

スケーリング則とは、ハード面(例えば半導体の数)、ソフト面(例えばAIモデルの大きさ、変数の数)、データ面(学習データの多さ)がそれぞれ大きくなればなるほど、AIの予測精度が上がる傾向にあるということ。もちろんこれは経験則なので、これまではそうだったが、今後もそうである保証はない。ただ今後も性能がアップすることを期待して、AIの巨大化が続いている。

創発的能力というのは、AIモデルの大きさがある点を超えると、性能が急激に向上するという現象のこと。例えば最新のAIは教えなくても、その文章のネガポジ判断ができる。つまり商品レビューの投稿が好意的なものか、否定的なものかをAIが自分で判断できるわけだ。少し前までならAIに「嫌い」「だめ」は否定的、「好き」「最高」は好意的と教え込む必要があった。ただすべての否定的、好意的な表現を教え込むことなどできるわけはなく、「やばい」など、判断が難しいケースも結構あった。しかし最新のAIは、どんな表現でも自分で非常に正確に判断できるようになっている。AIモデルを大きくすることで、ある時点から急にできるようになったのだ。

このスケーリング則と創発的能力のおかげで、AI投資の巨額化が続いており、その結果、AIが今後どこまで精度が向上し、どのような能力を身につけるのかは分からない。つまりどのような業界にどのような影響を与えるのかは、現時点では正確に予測できない状態が続いている。このことがAI業界の勢力図を非常に流動的にしている大きな原因になっている。

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