中東情勢、再び緊迫の時代へ......ハマース、イスラエル、シリアの軍事対立が示すもの
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月13日 16時30分
このテロは、中国新疆ウィグル自治区出身者からなるアル=カーイダ系のトルキスタン・イスラーム党がよる犯行と見られているが、シリア軍とロシア軍の攻勢を受けて、シャーム解放機構もドローンを投入した攻撃を激化させている。
イスラエル軍がダマスカス、アレッポ両国際空港を爆撃した10月12日にも、シャーム解放機構が保有すると見られるドローンがアレッポ市に飛来、シリア軍の防空部隊がこれを迎撃している。イスラエルは「アクサーの大洪水」作戦を行うハマースをイスラーム国と同一視し、その根絶を主唱している。だが、シリアでは、イスラエルとアル=カーイダが奇妙なシンクロを見せている。
地域戦争への危険
シリアでは、このほかにも10月1日にトルコの首都アンカラの内務省施設前で発生した自爆テロのクルディスタン労働者党(PKK)につながりのある勢力による犯行だと断じたトルコが、10月4日から、PKKの系譜を汲む民主統一党(PYD)が勢力下に置くシリア北東部への大規模な爆撃や砲撃を続けて、石油関連施設などのインフラ施設が標的となっている。
トルコ軍の攻撃は、シリア軍の陣地にも及んでいるほか、10月5日には、シリア北東部に違法に駐留を続けている米軍が接近したトルコ軍のドローン(Anka-S)を撃墜するという事案も発生している。
「アクサーの大洪水」作戦に「抵抗枢軸」がどの程度本格的に介入するかは不透明だ。だが、シリア国防省が両国際空港に対するイスラエル軍の爆撃に対する報復先として、反体制派の掃討を示唆していることからも明らかな通り、イスラエルと「抵抗枢軸」の挑発合戦が激化すれば、紛争はイスラエルとハマースを含むパレスチナ諸派や「抵抗枢軸」の戦闘に限られず、シリア政府、アル=カーイダ系組織が主導する反体制派、クルド民族主義勢力、そしてこれらを後援するロシア、イラン、トルコ、米国を巻き込んだ地域戦争、あるいは世界大戦に発展する危険をはらんでいる。
青山弘之(東京外国語大学教授)
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