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なぜガザは監獄になったのか...ハマス本拠地の歴史をひもとく

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月18日 12時30分

07年、ハマスはファタハの武装部門と衝突して、瞬く間に勝利し、ガザを完全に掌握した。しかし国連や米国務省は、ガザは今もイスラエルの一部との認識を変えていない。

現在、ガザの人口は200万人を超える。大多数がパレスチナ人で、約半分が18歳以下だ。6~12歳の子供の95%以上が小学校に通っているほか、地元のガザ・イスラム大学に通う学生の57%は女性だ。

ただ、生活環境は厳しく、貧困率は53%に達し、19~29歳の失業率は70%にもなる。23年の世界銀行の調査では、住民の71%が鬱や重い心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいる。その最大の原因は、過去16年にわたるガザ封鎖だ。

07年にハマスがガザを掌握すると、イスラエルとエジプトは米欧の支持の下、ガザへのアクセスを原則禁止する措置に出た。食料や燃料や建築資材の搬入は制限され、ガザの漁師がどこまで海に出られるかまで制限されるようになった。国連の調べでは23年、ガザから出ることが許されたのは月5万人だった。

一般市民に襲いかかる悲劇

長年の封鎖で、生活インフラは著しく悪化した。飲み水や医療設備も不足している。電気が使えるのは1日6~12時間で、あとは停電だ。NGO「パレスチナ人のための医療支援(MAP)」は、ガザの医療システムは「崩壊寸前」だとしている。

こうした制限は、とりわけ若者や弱者を苦しめている。病人がガザの外で治療を受けたくても、イスラエルの許可証を得られない。優秀な学生が留学のための奨学金を得ても、ガザから出る許可が出ないことも少なくない。国連の専門家は、この封鎖はガザ住民を集団的に罰する措置であり、国際法違反だとしている。

イスラエルは、ガザ封鎖は「テロやロケット弾による攻撃をはじめとする敵対行為」からイスラエル市民を守るとともに、軍民両用品がガザに運び込まれるのを防ぐために必要だと主張している。そしてハマスが暴力を放棄し、イスラエルを承認し、これまでの合意を守れば解除するとしている(ハマスはイスラエルの存在を認めていない)。

ハマス側は、この提案を一貫して拒否してきた。それどころか08年には、ガザの外側にあるイスラエルの人口密集地に対するロケット弾や迫撃砲の発射を強化した。これに対してイスラエルは08~09年、12年、14年、21年の4回にわたり大規模なハマス討伐作戦を展開した。これによりパレスチナ人4000人が死亡したが、その半分以上が民間人だった。国連によると、ガザの住宅、農業、工業、電気・水道への被害は50億ドルを超えるという。

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