若年層の投票率が低ければ、教育や雇用政策は二の次にされる
ニューズウィーク日本版 / 2023年11月15日 10時45分
<日本は他の主要国と比較して全年代で投票率が低く、特に20代、30代の低さが際立っている>
間接民主制(議会制民主主義)の社会では、国民は一定数の代表者を選ぶ形で政治に参画する。自分の思いを託した候補者、ないしは自分の考えに近い公約を掲げた候補者を選ぶわけだ。陳情、デモ、インターネット上での意見表明など、今では政治参画の手段は多様化しているものの、選挙での投票が主な手段であることに変わりはない。
ただこれは義務ではないので、選挙のたびに投票所に足を運ぶ人もいれば、そうでない人もいる。前者のパーセンテージが投票率なのだが、国会議員を選ぶ国政選挙の投票率は時代とともに低下の傾向にある。地方選挙も似たようなものだろう。
他国と比べてみても、日本人の投票率は低い。2020年にISSP(国際意識調査グループ)が実施した調査によると、選挙権のある国民のうち、直近の選挙で投票したと答えた人の割合は日本が71%、アメリカが84%、スウェーデンでは95%という具合だ。
投票率は年齢によっても違うが、20代~70代以上の年代別の投票率を線でつないだグラフにすると<図1>のようになる。日本を含む主要7カ国の折れ線が描かれている。
日本の折れ線(赤色)は最も下にあり、どの年齢の投票率も7カ国の中で最も低いことが分かる。年齢による差も大きい。対してオーストラリア(濠)の折れ線はフラットで、高い位置にある。老若問わず、大半の有権者が投票している。この国では、選挙での投票は義務となっているためだ(違反者には罰金が科せられる)。
こうした選挙制度の他、各国で政治教育(シティズンシップ教育)がどれほど充実しているかの違いにもよるだろう。
投票率が低いと、為政者は有権者の意向にあまり関心を払わなくなる。さらに年齢差が大きいとなると、大きな票田となる高齢層の要望が重視されがちだ。候補者は高齢者が喜びそうな公約を掲げ、若年層が望む教育や雇用対策などは二の次にされる。
上記のISSP調査は28の国を対象としているが、そのうちの19カ国について、政府の教育費支出を知ることができる。<図2>は横軸に20~40代の投票率、縦軸に公的教育費支出の対GDP比をとった座標上に、19の国のドットを配置したグラフだ。
若年層の投票率が高い国ほど、教育にカネをかけている傾向がある(相関係数は+0.709)。これが因果とは限らないが、教育政策に関心が高い子育て年代の政治参画が進むと、国としてその要望を無視できなくなるのは道理だ。
日本は横軸、縦軸とも最も低い位置にあり、子育て年代の意向が政治に十分反映されていない可能性も考えられる。
より一般的な言い方をすれば、民主主義のツールが機能していない国では、民に寄り添った政策は為されにくい。政治的無関心がはびこると、驚くほどの勢いで独裁が加速化する。今の日本では、その兆候が出始めている懸念もある。
日本の若者の政治的無関心は、子ども期の管理教育で無力感が植え付けられていることにもよる。まずは、時代錯誤の校則で生徒を縛り付けるのを止めることからだ。
<資料:「ISSP 2020 - Environment IV 」、
OECD「Education at a Glance 2023」>
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