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「理解できない人」を侮辱しない...「泣き寝入り」しない人たちを批判するのではなく、リスペクトを

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月24日 17時18分

その発端はやはりオリンピック前後のこのジェントリフィケーション(※)にあったと思っています。あのときにロンドンの住宅価格がわあっと上がって、お金のない人は北部に行けと福祉に言われてたくさんの人が移動しました。もともとロンドンに住んでいた貧乏な人たちを追い出して、ロンドンをお金持ちの街にしてしまった。だから、リベラルで高学歴でお金持ちの人ばかりの偏った街になったと思います。

※都市において、低所得の人々が住んでいた地域が再開発され、お洒落で小ぎれいな町に生まれ変わること。「都市の高級化」とも呼ばれ、住宅価格や家賃の高騰を招き、もとから住んでいた貧しい人々の追い出しに繫がる。(書籍本文より)

だから、EU離脱投票のときも、ロンドンの人たちは残留派だったわけです。北部に行かされた人やもともと北部にいた人はルサンチマンを抱えていて、そういう人たちが「移民さえいなければ」という極右勢力の扇動に乗せられた。あのときは国内外の人が投機目的でロンドンの住宅を買い漁って、「住宅は住む場所であって貯金箱じゃない」と批判をされたりしました。

──そこまでのことが起きていると、個人で解決するのは難しいと思ってしまうものですよね。もう政治の力で介入してもらわないとどうしようもないんじゃないかと思えてしまうと言いますか。

でもね、政治に介入してもらうって言ったって、プラカードを振って「何とかしてください」って訴えたところで、政治はなかなか動かないじゃないですか。議会政治はそう簡単に動くシステムじゃないから。この本の事件でも政治は何もしてくれなかった。訴えても訴えても動かないから、そのときどうするかと言ったら、直接行動なんです。こういう占拠活動も直接行動の一種です。あんたたち政府が何ともしてくれないんだったら、自分たちで公営住宅を占拠して、なんなら修繕もして住んでやるよ、空き家なんだから、と。

ストライキも直接行動ですよね。生活が苦しいから賃金を上げろとお願いしても上げてくれないんだったら仕事をしませんよ、と。イギリスでは去年から今年にかけてストライキがとても盛んです。医療関係者や教育関係者、交通機関に関わる人のストライキが去年からずっと続いているから、うちの息子の学校も2週間くらい休みになりました。そういう直接行動を取られたら政府もびびるし、困るじゃないですか。

イギリスでは病院のほとんどはNHS(国民保健サービス)のものですから、医療関係者は公務員です。公務員がストライキをするということは、政府にもっと金を出せと迫る、政府への抵抗運動でもあるんですよ。それによって一般市民ももちろん困っているんだけど、今年に入ってからストライキの支援率は上がっているんです。ストライキをしている人たちではなく、この状況を何とかすることができない政府に向かって一般の人たちも怒っている。

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